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J.シベリウス:交響詩「タピオラ」

ネーメ・ヤルヴィ指揮  イェーテボリ交響楽団


タピオラとは、フィンランドの叙事詩「カレワラ」に登場する森の神タピオの領土という意味。

交響詩「タピオラ」は、「4つの伝説曲」のように叙事詩に書かれている物語を題材にしたものではなく、

タピオが棲むといわれるフィンランドの森の神秘的な雰囲気と、

それを取り巻く美しくも過酷な自然とを融和させて描いたもの。

1925年に完成されたシベリウス最後の大作であり、

彼の交響詩の中でも、最高傑作と評価されています。


冒頭、ティンパニの轟きの後に奏される単純な短い旋律は、

冴え冴えとした中にも、そこはかとなくロマンを感じさせる「森の主題」。

これが音程を変えて何度も何度も繰り返されるうちに、森閑・荒涼としたフィンランドの森に誘われていきます。

しばらくすると、フルートが奏する「タピオの主題」が登場し、遠雷を思わせるティンパニの轟きや森の精たちが飛び回る神秘的な情景が描写されるものの、

再び人を寄せつけぬ凍てつくような静寂に、森は包まれていきます…。


森の神タピオの怒りなのでしょうか!

突如、静寂を打ち破る咆哮によって訪れるクライマックスは、

猛り狂う嵐の中、超然と佇むタピオの姿を思わせる、まことに雄大な楽想!

森閑・荒涼としたフィンランドの森と、地吹雪のように時折牙をむいて襲いかかる大自然の脅威!

しかし、雪と氷で覆われた大地にも暖かい陽射し降り注ぐ、静謐ながら感動的なエンディングが訪れます。


シベリウスの交響詩では、もっぱらC.ディヴィスやオーマンディーといった、老熟した語りの上手い指揮者の演奏を好んでいますが、

この曲に関しては、父ヤルヴィ/イェーテボリ響が1985年に録音した、若々しい演奏がもっぱらの愛聴盤!

穏やかさよりも、鮮烈さが似合う曲想だと感じています。

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