渡米する船内に音の出ない鍵盤を持ちこんで、練習したと言われています。
しかし曲の長さと、技術的に大変な難曲であることがネックとなり、当初は採り上げるピアニストはほとんどいなかったとか。
1928年にアメリカデビューを果たしたホロヴィッツが、「私の曲」と言って愛奏していたそうですが(WIKIPEDIAより)、
1958年の第1回チャイコフスキーコンクールのピアノ部門で優勝したヴァン・クライバーンが本選で弾き、凱旋帰国時にコンドラシン/シンフォニー・オブ・ジ・エアーとの協演でステレオ録音されたことによって、一大ブームを巻き起こしました。
今日エントリーするのは、この曲を得意にしたホロヴィッツによる2回目の録音(1951年)。
フリッツ・ライナー指揮するRCAビクター交響楽団との演奏です。
ピアノとオケの、火花を散らすような丁々発止としたやりとりや、
ピアノや木管楽器が醸し出す冴え冴えとした透明なメランコリーが、
比較するものがないほどに、素晴らしいと思えるからです。
第1楽章:Allegro ma non tanto
シンプルながら、心のときめきを感じさせるオーケストラの短い前奏に続き、
淡々とした中に悲しみと愛おしさが込められたピアノの美しい旋律に、いきなり惹き込まれます。
ホロヴィッツの硬質な音色は、若々しくて瑞々しい叙情を醸し、曲想にピッタリ!
この楽章、当時62歳のホロヴィッツの超絶的な技巧には、唖然とさせられます。
ライナー指揮するオーケストラの凄まじい推進力が、超絶技巧を駆使したピアノと丁々発止と凌ぎを削るさまは、
疾風怒涛の青春期を思わせる若々しい激しさが…
木管の冴え冴えとした響きと硬質なピアノのそれが溶けあうさまは、
嵐が去って雲ひとつない満天にさんざめく星座を見上げるような、大自然の壮大な美しさが感じられます!
第2楽章:Intermezzo(Adagio)
ロシア民謡風の美しくも悲しい主題が、変奏されつつ、次第に高揚していくさまは、
果てしなく広大な大地に沈みゆく夕陽を見るように、神秘的かつ壮大なロマンが感じられる、大変に印象的な楽章。
この楽章でも、木管の冴え冴えとした響きと、瑞々しいピアノの音色が、素晴らしい抒情を醸しだします。
第3楽章:Finale(Alla brerve)
休みなく突入する第3楽章は、
ピアノの技巧を駆使したような行進曲風の第1主題と、
やはりピアノで提示される抒情的な第2主題が複雑に絡み合いながら、めくるめく華麗な音楽が展開されます。
ピアノとオケの丁々発止としたやり取りが堪能できる、素晴らしい演奏ですが…。
ただ、いかんせん60年前のモノラル録音であり、我家の再生装置では、終楽章のコーダ部では音が潰れてしまって…。
そのことは返す返すも残念なのですが、火花を散らすような白熱感と、類稀な抒情性に満ちたこの演奏、是非一度お聴き頂きたいと思います!