いずれもピアニストの立場で書かれたもので、比重はピアノに置かれていました。
1797年、ベートーヴェンは第1番の作曲に取り掛かかった時から、ヴァイオリンとピアノが対等に渡り合える作品を目指しました。
しかし、この頃には既に聴覚の異常が現れており、精神的にも不安定な状況に置かれていたと言われています。
にもかかわらず、完成した作品からはそういった兆候は微塵も感じられず、活気に満ちて幸福感に溢れているのは、
自己の目指すヴァイオリンソナタの形式確立への強い意欲が、耳疾患への初期の不安を克服したと考えても、間違いではなかろうと思います。
私にとっては、この曲には2つの名盤が存在しています。
一つはグリューミオとハスキルによる、活気に満ちて初々しく、和気あいあいと語り合うような、いかにも青春まっただ中といった趣の大変に晴れやかな演奏なのですが、
今日エントリーするのは、クレーメルとアルゲリッチによる、丁々発止とした両者のスリリングなやりとりの中に、逆にフレンドリーな親しみが感じられる演奏!
この盤に拘る理由は、
第2楽章の第2変奏での、クレーメルの奏でるヴァイオリンの音色の、繊細で神々しいまでに透明な爽やかさが、
世にも稀な、まさに一期一会の出会いと思えるからです。
第1楽章:Allegro con brio
ヴァイオリンとピアノの力強いユニゾンで開始され、
両者の丁々発止としたやり取りが展開されていくこの楽章は、
時に愛らしく、ユーモアさえ感じられる自由奔放な表現が素晴らしいもの!
第2楽章:Tema con variazioni(Andante con moto)
主題がピアノによって語りかけるように提示され、ヴァイオリンが優しく応えるように繰り返されます。アルゲリッチのピアノの愛らしさ!
第1変奏は、ピアノが雅な愛らしさと楽しさを表現します!
第2変奏は、前述した通りで、音楽を聴く喜びがこみ上げてきます!
第3変奏では、短調となって、情感が強く表現され、
第4変奏では、穏やかさが回帰し、小声で囁くようにエンディングを迎えます。
第3楽章:Rondo(Allegro)
アルゲリッチの奏するシンコペーションのリズムが、愉悦感を際立たせる素晴らしい演奏!
いつ聴いても、気持がワクワクとしてきます。