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A.ヴィヴァルディ:フルート協奏曲第2番「夜」

スティーヴン・プレストン(フルート)
クリストファー・ホグウッド指揮  エンシェント室内管弦楽団


フルートの原型は、有史以前に既に世界中の原始民族間に存在していたことが知られており、

その後、古代エジプトやギリシャの発掘物の中からも、ある程度進歩した型のものが発見されています。

しかしながら、横笛としてのこの楽器が合奏の中に採り入れられたのは、17世紀フランス・バロック期の作曲家ジャン=パチィスト・リュリ(1632-87)の作品が最初で、

これを機にフランス国内では有能なフルート奏者が輩出され、

楽器も改良が施され発達、全ヨーロッパへと拡がっていきました。


この進歩したフルートに着目し、この楽器のための協奏曲を最初に作曲したのが、ヴィヴァルディ(1678-1741)。

op.10として、6曲のフルート協奏曲がまとめられている中で、「夜」という標題が付けられた第2番をエントリーします。

第1、2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ各1名と、チェンバロ、フルート・トラヴェルソ(18世紀初期のSchuchart Traverso)という、極めてスリムな編成。

そのために表情が細やかで、各楽器の音色も含めたバランスにも細心の配慮がなされているのでしょう、

古楽器特有の、雅でしっとりとした潤いのある演奏に仕上がっています。


第1楽章:Largo
 現代のフルートでは比較的容易に演奏できるのであろう息の長いトリル。技巧的鮮やかさという点では及びませんが、チェンバロと溶けあった雅な響きは大変に印象的なもの!

第2楽章:Presto(Fantasmi)
 Fantasmi(幽霊)の副題が付けられていますが、おどろおどろしさは全くなく、快速テンポが心地良い音楽。
強いて「幽霊」と結びつけるとしても、せいぜい「オ〜バ〜ケ〜」と言って子供を怖がらせる程度のもの…。
日本人とは異なった「幽霊観」を持つ国民なのでしょう?

第3楽章:Largo
 憂愁を含んだパストラール風の音楽。「こだま」を思わせるトラヴェルソの響きが、何とも言えない趣を感じさせます。

第4楽章:Presto
 快活な推進力に溢れた音楽。憂いを含んだ美しい旋律が印象的です。

第5楽章:Largo(Il sonno)
 Il sonno(眠り)の副題が付いた曲。旋律らしいものは無く、朦朧とした夢の世界を表現しているのでしょうか。

第6楽章:Allegro
 朦朧とした中から次第に目覚め始め、やがて爽やかで、晴々として、喜びに満ちた音楽が湧き上がってきます…。
イタリアバロック音楽の神髄を感じさせるような作品です。


ご承知のように、「バロック(ポルトガル語)=歪んだ真珠」の意から派生した言葉で、

均整と調和のとれたルネサンス様式に対し、

自由な感動表現、動的で量感あふれる装飾形式を意味するもの。

時代を超えて高く評価される作品を、現代楽器による非の打ちどころのない演奏で聴くのも良いのですが、

演奏技法の不自由さをクリアーした古楽器による演奏で聴くことも、時に素朴な味わい深さを感じことがあります。

この演奏などは、そういった典型ではないでしょうか。、、

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