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ベートーヴェン:交響曲第8番

ジョン・エリオット・ガーディナー指揮
オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ ロマンティーク


全4楽章を通して、明晰で曖昧さがなく、活力漲る明るい曲想を持つこの交響曲は、

第3、5、6、7、9番のように、絶大な人気を誇る曲とは言えないのでしょうが、

メルツェルが発明したメトロノームの刻むリズムから思いついた言われる第2楽章が有名で、

誰からも愛される、印象的な作品として、存在感を示しておます。


今日エントリーするのは、ガーディナーによるベートーヴェン交響曲全集に収録されたもの。

第1楽章:Allegro vivace con brio

冒頭から、正攻法の演奏を印象付ける、緊張感が漲った力強いもの!

引き締まった快速テンポで進むこの演奏は、車窓に次から次へと展開する風景を眺めるような、ワクワク感を抱かせるもの。

この緊迫感、嘗てトスカニーニ/NBCのLPでベートーヴェンの第9 を初めて聴いた時、

「一体どんな音楽が…」と胸ときめかした時のそれと、極めて類似したものでした。

聴き馴染んだベートーヴェンの交響曲でこんな気持になったのは、久しぶりのことでした。


第2楽章:Allegretto scherzando

木管楽器が刻む規則的なリズムにのって、ヴァイオリンが奏でる上機嫌な旋律は、

お洒落で、茶目っ気があって、おどけていて…等々、

聴きながら一緒にハミングをしたくなるような、こんな愉しげな曲は、ちょっと思い当たりません…。


第3楽章:Tempo di Menuetto

メヌエットと言えば優雅なイメージを抱きますが、

それを覆すぎくしゃくした引き摺るようなリズムと、パロディーを思わせるトランペット…。

トリオ部のホルンの雅な響きが印象に残ります。


第4楽章:Allegro vivace

酒神バッカスに魅入られたように、

天真爛漫に繰り広げられる舞踏の世界を思わせるガーディナーの演奏には、文句なく脱帽です!

無茶苦茶に楽しい音楽です!


「古楽器か、現代楽器か」などという議論など、枝葉末節の話題としか思えないほどに、

ありのままの人間の表情が、精彩に溢れる演奏によって表現されたような、これは名盤だと思います。

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