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J.ブラームス:ピアノソナタ第1番 ハ長調 

アナトール・ウゴルスキー(ピアノ)


1853年、20歳のブラームスは名ヴァイオリニストのヨアヒムの紹介で、ヂュッセルドルフのシューマン宅を訪ねた時に演奏した作品。

曲を聴いて大きな感銘を受けたシューマンは、「新しい道」というエッセイでこの作品と作曲家ブラームスの才能を絶賛、

彼の存在を世に知らしめる大きなきっかけとなりました。

出版の都合で第1番op.1とされていますが、

実際にはソナタ第2番(op.2)や、スケルツオ(op.4)の方が先に完成しているばかりでなく、

それ以前にも習作のソナタを幾つか書いていたそうですから、

満を持してシューマンにその真価を問うた、ということでしょうか。

名作と評される晩年の小品集とは当然のことながら趣は異なりますが、

20歳の若者が抱く情熱や、ロマンに溢れた瑞々しい感性が聴き手の心を打つ、ブラームスの傑作の一つだと思います。


第1楽章:Allegro
 若々しい力強さが弾ける第1主題、
第2主題の左手の刻むリズムは、
しとしとと降る雨が街灯に照らされた舗道に輝く、そんな情景を彷彿させる、滴るような繊細な抒情を湛えた、大変に美しい音楽!

第2楽章:Andante
 主題と3つ(?)の変奏から構成されていますが、
変奏技術を披歴するためではなく、
刻々と深まっていく感情を表現するために、敢えて変奏という形式を採ったのではないかと思います。

 胸の内を訥々と語るように奏される素朴な変奏主題は、古いドイツ民謡から採られたもの。
変奏が進むにつれて、繊細な感情の移ろいや高まる思いが表出されていく、内容の濃い音楽です。

第3楽章:Scherz(Allegro molto e con fuoco)
 若々しく生気に溢れた主題部と、内省的な夢を思わせるロマンティックなトリオ部。

第4楽章:Final(Allegro confuoco-Presto non troppo ad agitato)
 脇目もふらずに突っ走るような、躍動感に満ちた第1主題と、
幸せな充足感が漂う穏やかな第2主題。


今日エントリーするのは、ウゴルスキーの演奏です。

明るく伸びやかで、響きが大変に美しく、

これまでに聴いたどの演奏よりも繊細で瑞々しく、

多分クララも好感を抱いたのであろう、

若き日の初々しいブラームスの姿が、感じられるからです。

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