完成された順番は、作品番号とは異なり、第3、1、2、5、6、4番の順。
したがって、今日エントリーする第3番op.18-3は、弦楽四重奏曲最初の作品ということになります。
同じ作品番号が付けられてはいますが、それぞれが個性的な魅力を有していることは申すまでもありませんし、
最初に書かれた第3番からして既に、ハイドンが確立した「均衡がとれた響きの凝縮した」古典的な様式の枠にとらわれず、より自由な音楽表現を指向した作品と評されています。
従来から馴染んできたアルバンベルク四重奏団の演奏は、様式にのっとった部分では、その偉大さがクローズアップされ、ため息が出るほど素晴らしいのですが、
逆にベートーヴェンのチャレンジと思える部分が平凡に聴こえてしまって、心に届いてこないのです。
曲を立派に構築しようとするあまりに、却って未熟な部分が露呈されたように感じられます…。
ところで今日エントリーするズスケ四重奏団の演奏は、「やんちゃ」というか、「破天荒」というか、良い意味で若々しい荒削りな面白さが感じられるのです。
ベートーヴェンを演奏するにあたっては、「他の誰の作品を演奏する時よりも、恣意を捨てて、虚心坦懐な気持で楽譜に忠実に!」と言われるそうですが、
ズスケ四重奏団の演奏からは、未だ巨匠の域には達していないが、前途有望な20歳台後半のベートーヴェンのありのままの姿が、原寸大で浮かび上がってくるように思えます。
その結果としてなのでしょうが、曲の隅々に至るまでベートーヴェンのチャレンジが聴き取れ、興味深く全曲を聴き通すことが出来ました。
4人の演奏者が、各楽器の音を聴き合いつつ、<>かつ一人ひとりがいきいきと旋律を歌わせ、リズムを刻んでいく、そんな精彩に溢れた演奏だと思いました。
ベートーヴェンの初期弦楽四重奏曲は今一つだと感じておられる方には、一聴されることをお薦めしたいディスクです。