それが彼のイデオロギーに反する故なのか、それとも他の理由によるのか、判然とはしていないようです…。
それはさて置いて、当時のプロコフィエフは、ピアノ協奏曲第2番の発表によって、モダニズムの旗手としての評価を得ていましたが、
亡命生活を終えてソ連邦に帰国(1933)してからは、現代的感覚と豊かな抒情性を併せ持つ作品を発表するようになりました。
ただ、亡命前に書かれたこの曲からは、何にもまして作曲者の豊かな抒情性が聴き取れることからも、
彼の初期作品の多くは、自らの持ち味を封印してまで、モダニズム音楽を追求していたということになるのでしょう…。
ところでヴァイオリン協奏曲第1番は、初演こそ成功はしなかったものの、時が経つにつれて理解を得、現在では彼の協奏曲作品中、最も人気の高いものになっています。
今日エントリーするのは、ベルのヴァイオリンと。デュトワ指揮するモントリオール管の演奏。
プロコフィエフの持つリリカルな側面がチャーミングに表現され、かつ曲の持つ深みをも十全に感じさせる、美しく且つ素晴らしい演奏です!
第1楽章:Andantino
冒頭部では、ソロ・ヴァイオリンとフルートの音色は、あたかも純粋無垢な少女の魂が虚空をさまようように、
美しくしかし心細げに、しかしほんのりとした色香が漂う音楽です。
ベルのヴァイオリンもさることながら、ここはデュトワの表現が素晴らしい!
第2楽章:Scherzo、Vivacissimo
少女が無邪気に飛びまわっているような音楽。
でも、得意げな表情も垣間見えて、ユーモラスな側面も顔を出します。
第3楽章:Moderate
諧謔性と抒情性が対等に入り混じって開始されますが、
徐々に抒情性が高まるにつれて、天国の花園を逍遙するような趣が…。
最後は至福の時が訪れて、余韻をたなびかせつつ、曲は終わります。
リリカルな側面に偏っているのかもしれませんが、
私にとっては、一瞬たりとも弛緩することなく、至福の時が過ごせる演奏。
そういった意味で、超お薦めできるディスクだと思います。