この中には、ある年代以上の方なら、多分どなたもが一度は耳にされたであろう「魔王」「野バラ」なども含まれています…。まさに豊穣の年と言われる所以でしょう。
今日エントリーする弦楽四重奏曲第9番も、この年に書かれた作品の一つ…。
ロマン派の黎明を告げるかのように魅力のある作品だと思うのですが、
瓜二つとは言えないまでも、かれが敬愛したモーツァルトからインスピレーションを得たと思える音楽が顔を覗かせます。
そのことによって、オリジナリティは若干損われるものの、
単純に二番煎じとは言い難く思えますし、それまでの彼の弦楽四重奏からは感じられなかった深みが加わったようにも思えます。
第1楽章:Allegro con brio
仄暗さの中にロマン派の黎明を暗示させるような、シューベルトらしからぬ激情を漲らせた主題と、寂寥とした孤独感が漂った中間部との対比が、大変に印象的な楽章です!
第2楽章:Andantino
第1主題は、まるでモーツァルトの緩徐楽章かと錯覚するような、大変に穏やかな曲想のものです。
その一方で、繊細な気持の移ろいが表出された、いかにもシューベルトらしい第2主題!
第3楽章:Menuetto、Allegro vivace
主題は、モーツァルトの交響曲第40番第3楽章を意識して書かれたものと直感したのですが、vivaceと指示されている分、悲劇性は、より高まるように感じますが、如何?
トリオ部の優雅なレントラー風の舞曲との対比が美しい楽章です。
第4楽章:Allegro
ほんのりとメランコリーを含んだ素朴な農民風の舞曲は、いかにもシューベルトらしい魅力に富んだもの。
同じト短調で書かれたモーツァルトの交響曲第40番を始めとする偉大な作品群の、若きシューベルトに与えた影響が具体的に表わされたこの作品。
シューベルト特有の繊細さとのコラボレーションに、興味深く聴き入った次第です。