それにインスパイアされたハイドン(1732-1809)が1773年に作曲した、この時期を代表する作品。
ヘ短調で書かれ、演奏時間にして全体の40%強を占めるAdagioがいきなり第1楽章に置かれているため、
第1〜3楽章には重苦しい雰囲気が漂った、ハイドンの交響曲としては(多分)異色のもの。
「受難」という副題から、『十字架上のキリストの七つの言葉』(1786年作曲)を思い浮かべ、関連性をネット検索してみましたが、
疑問は解消されないままに、この文章を書いています…。
ピノック指揮するイングリッシュ・コンサートを聴いての印象ですが…。
第1楽章:Adagio
「受難」という副題に相応し、厳粛で重苦しい悲痛さが楽章全体を覆っており、
ふっ、と息を吐けるようなやすらぎの瞬間は、全くありません。
第2楽章:Allegro di molto
悲劇的な感情に支配された、デモーニッシュな楽章。
モーツァルトの第25番の交響曲の第1楽章を髣髴します。
第3楽章:Menuet
悲痛なメヌエット!
トリオ部分のフルートやオーボエによる明るい旋律も、どこかわざとらしく感じられて、気分は一向に晴れません。
これまでの3つの楽章には、心の安らぐ瞬間が全く感じられなかったのですが…。
第4楽章:Presto
前3楽章と同じヘ短調で書かれていますが、悲しみ(F minor)堪えながらも、懸命に突っ走って(Presto)いるうちに、
いつの間にか気持が晴れて、心地良い爽快感すら覚えるような、そんな趣の音楽!
この爽快感、苦しいトレーニングに耐えた体育会系の諸兄には、ご理解・ご共感いただけるのではないでしょうか。
才知に富んだハイドンならではの、鮮やかな終楽章だと思いました!