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ヨーゼフ・ハイドン:交響曲第49番『受難』

トレヴァー・ピノック指揮、 イングリッシュ・コンサート


18世紀の後半、理性偏重の啓蒙主義に反対して、感情の自由と人間性の解放を求める動き(シュトルム・ウント・ドラング)が高まりましたが、

それにインスパイアされたハイドン(1732-1809)が1773年に作曲した、この時期を代表する作品。

ヘ短調で書かれ、演奏時間にして全体の40%強を占めるAdagioがいきなり第1楽章に置かれているため、

第1〜3楽章には重苦しい雰囲気が漂った、ハイドンの交響曲としては(多分)異色のもの。

「受難」という副題から、『十字架上のキリストの七つの言葉』(1786年作曲)を思い浮かべ、関連性をネット検索してみましたが、

疑問は解消されないままに、この文章を書いています…。


ピノック指揮するイングリッシュ・コンサートを聴いての印象ですが…。

第1楽章:Adagio
 「受難」という副題に相応し、厳粛で重苦しい悲痛さが楽章全体を覆っており、
ふっ、と息を吐けるようなやすらぎの瞬間は、全くありません。

第2楽章:Allegro di molto
 悲劇的な感情に支配された、デモーニッシュな楽章。
モーツァルトの第25番の交響曲の第1楽章を髣髴します。

第3楽章:Menuet
 悲痛なメヌエット!
トリオ部分のフルートやオーボエによる明るい旋律も、どこかわざとらしく感じられて、気分は一向に晴れません。

これまでの3つの楽章には、心の安らぐ瞬間が全く感じられなかったのですが…。

第4楽章:Presto
 前3楽章と同じヘ短調で書かれていますが、悲しみ(F minor)堪えながらも、懸命に突っ走って(Presto)いるうちに、
いつの間にか気持が晴れて、心地良い爽快感すら覚えるような、そんな趣の音楽!


この爽快感、苦しいトレーニングに耐えた体育会系の諸兄には、ご理解・ご共感いただけるのではないでしょうか。

才知に富んだハイドンならではの、鮮やかな終楽章だと思いました!

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