「モーツァルトのピアノ三重奏曲K564は、元来ピアノソナタとして書かれたもので、彼の他の三重奏曲と比べると、3つの楽器の構成力が十分に生かされていない作品」だとか…。
初心者向けの作品とも言われ、他の三重奏に比べ、話題になることも殆どないようです。
しかし、今日聴いたウィーン・シューベルト・トリオ(現アルテンベルク・トリオ)による演奏は、
シンプルで愛らしい曲想の中に、至高の美しさが漂う素晴らしい演奏。
その美しさは、この作品の1か月前に完成されたという、名作の誉れ高いK.563のディヴェルティメントにも、相通ずるとものと思えます。
第1楽章:Allegro
かわいらしい旋律ですが、時に母(父?)性本能をくすぐるような、愛おしさが感じられる音楽。
展開部での転調では、身震いするような至高の美しさに溢れた瞬間が訪れます。
第2楽章:Andante
主題(モーツァルトが13歳時の作品「バスティアンとバスティエンヌ」の第1曲のアリア)と、6つの変奏曲から構成されています。
ただ、第3変奏までは、「楽器を変えているだけ?」と単調に感じてしまうのですが、
第4変奏以降は、その面白さに、次第に惹き込まれていきます…。
ただ、この楽章に関しては、「モーツァルトがピアノを弾いていたら、第1〜3変奏にも即興の妙を活かせたのだろうな」と感じるのも事実。
好意的に見たがるのは、モーツァルト贔屓のせいでしょうか?
第3楽章:Allegretto
シチリア舞曲風の主題と書かれていますが、独特の付点リズムの心地よさに、知らぬ間に身体が揺れてくるような、幸福感に満ちた演奏。
仄かなメランコリーが高貴なまでに美しい転調部分と、それをきっかけとした気持の高揚が心地良い推進力となって、いっそう心地良い幸福感に満たされていきます!