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チャイコフスキー:交響曲第2番『ウクライナ』

クルト・マズア指揮
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団


この交響曲は、1872年の夏の休暇時に、ウクライナに住む妹を訪ねた際に着想されたもの。

第1、2、4楽章それぞれに、ウクライナ民謡が効果的に用いられていることから、

友人の音楽批評家によって、当時から「小ロシア(ウクライナの旧称)」と呼ばれていました。

この呼称は、14世紀に当地域のキリスト教区を区分けするために、ギリシャ人聖職者によって「大ロシア」「小ロシア」として区分されたことが発端。

しかし、18世紀末に帝政ロシアがこの地域を支配したさいに、帝国の辺境地という政治的な概念から、侮蔑を込めて「小さなロシア」と呼ばれた歴史を有するために、

近年は侮蔑的な名称として避けられ、「ウクライナ」と呼ばれるようになったとか…。


エントリーする演奏は、マズア/ゲヴァントハウス管によるもの。

明るく楽天的な気分や、ノスタルジー、それに当地で感じたのであろうオリエンタルリズムが心地良く表出されており、

私がこれまで聴いた中では、最も端正で美しい演奏と思えるからです。

第1楽章:Andante sostenutoーAllegro vivo
 序奏部、ホルンが奏でるウクライナ民謡「母なるヴォルガの畔で」の、ノスタルジックで美しいこと!
 主部でのリムスキー=コルサコフの『ロシアの復活祭』を思わせる旋律にも、懐かしさが感じられます。

第2楽章:Andante marziale、quasi moderato
 バレー音楽『胡桃割り人形』を髣髴するメルヘンチックな行進曲。
中間部の民謡「回れ私の糸車」は、草原に吹く一陣の風のような爽やかな抒情が…。

第3楽章:Scherzo:Allegro molto vivace
 砂塵を巻き上げて疾走する騎馬民族の躍動感を髣髴する音楽。
中間部は、かわいらしい和やかさ…。

第4楽章:Moderato assai−Allegro vivo−Presto
 誇らしげに勝利を祝うように、息つく間もなく変奏されていく主題は、民謡「鶴」が引用されているとか。圧倒的な高揚感を示しますが、
中間部では、夕闇せまる壮大な草原でオリエンタリズム溢れる音楽を聴く趣の、美しく印象的な時が過ぎていきます…。


ロシア指揮者やオケによる演奏を挙げるのが妥当なのかもしれませんが、

ノスタルジーやオリエンタリズムの表出の点で、敢えてマズア盤をエントリーしたしだいです。。

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