追悼の想いからなのでしょう、そのうちの10点を題材にして、ピアノ組曲『展覧会の絵』を作曲しましたが、
ムソルグスキーの生前には一度も演奏されず、出版もされなかったとか。
しかし1922年、M.ラヴェルによって管弦楽版に編曲されてからは、一躍世界的な人気曲に伸し上がったことは、ご承知の通りです。
今日エントリーするのは、1985年プレヴィン指揮するウィーン・フィルによる、ムジークフェライン・ザールでのライヴ録音。
インスピレーションに溢れ、じっくりと聴けば聴くほど、聴き手の想像力が高まる演奏です!
例えば冒頭のトランペット・ソロによるプロムナードを聴くだけでワクワクして、気持が高揚してきます。
尚、5回繰り返される「プロムナード」は、会場を歩くムソルグスキーの姿を表わしていると言われますが、
プレヴィンの演奏は巧みな表情付けによって、各プロムナードの性格を描き分け、
前奏曲・間奏曲として、見事に全曲をまとめ上げていると感じました。
第1曲:グノーム
魑魅魍魎が蠢くようなグロテスクさが、楽器の表情付けや、テンポを落として鈍重にすることによって、見事に表現されています。
第2曲:古城
古を偲ぶような、イングリッシュホルンの奏でる懐かしい響き…。
第3曲:デュイルリーの庭
子供たちの活発な茶目っ気ぶりと、甘えるような愛くるしさの描き分けが、鮮やか!
第4曲:ビドロ(牛車)
重苦しさの中にも、そんな気持ちを克己する力強さが感じられ、ある種感動的でもある音楽。最後には、虚無感が漂います…。
第6曲:サムエル・ゴールデンベルグとシュムイレ
威風堂々としたゴールデンベルグと、米つきバッタのようにへつらうシュムレイとのやりとりが眼前に彷彿できる一曲。
第8曲:カタコンベ(ローマ時代の墓)
不気味さと敬虔さが相混じった音楽。
後半の「死せる言葉による死者への呼びかけ」でのプロムナードの旋律は、亡き友人を偲ぶ追悼の音楽?
第9曲:バーバ・ヤーガ(鶏の足の上に立つ小屋)
力強さの中に、中間部の不気味な危うさが漂った雰囲気の描写が秀逸!
第10曲:キエフの大門
壮大さと静謐さを鮮やかに対比することによって、巧まずして曲の大きさが実感できる名演!
ラヴェルの編曲を鮮やかに再現したこのディスクは、
プレヴィン/ウィーン・フィルの数あるディスクの中でも、前述したように曲のまとめ方と表現力に秀逸である点で、出色の出来栄えと思います。