最近聴いたCD

C,サン=サーンス:交響曲第1番

ジャン・マルティノン指揮 
 フランス国立管弦楽団


サン=サーンスの交響曲と言えば第3番のみが際立って有名ですが、交響曲第1番は1851年に完成したとされていますから、なんとサン=サーンス(1835-1921)が16歳の時の作品!

「話題にされることもないし、若書きの作品だからどうせ…」という偏見から、これまで一度も聴いたことがありませんでした。

台風12号の影響で、長期間にわたって降り続いた雨もようやく上がり、雲ひとつない秋晴れを思わせる今日、気分転換を兼ねて初めて聴いたのですが…。


16歳の書きだからと、侮ってはいけないものですね!

サン=サーンスの大作でしばしば感じられる饒舌に過ぎる表現が、全くと言って良いほどに感じられません。

全4楽章を通じて、若者の夢や希望が美しく爽やかに歌われ、そして語られる、インスピレーションに溢れた素晴らしい作品!

一聴して、この曲のファンになりました。


今日聴いたのは、マルティノン/フランス国立管の演奏…。

第1楽章:Adagio-Allegro
 夜明けを思わせるような序奏部に続く主題部での、ホルンが奏でるパストラールな雰囲気や、無窮に拡がる大海原や蒼穹を連想させる音楽が展開されるさまは、
無限の可能性をもつ若者の抱く志を、音楽として表現したように感じられます。

第2楽章:Marche Scherzo(Allegretto scherzando)
 エキゾチックな舞曲風の旋律と、晴れやかなファンファーレ!

第3楽章:Adagio
 シルクのヴェールを思わせる、柔らかな夜の帳に包まれた甘美な世界が描かれています。
身震いするような美しさは、青年サン=サーンスの抱いたロマンの世界でしょうか。

第4楽章:Final(Allegro masetoso)
 休みなく続く終楽章は、子供の頃に快晴の秋空の下で繰り広げられた運動会を思い出すような、はちきれんばかりに健康的な音楽。
途中のフーガ部は、無限の蒼穹に向かって拡がっていく、怖れを知らない若々しい情熱が感じられる、大変に好ましい音楽と感じました。


後年の作品に感じられる深みこそありませんが、逆に彼の大作を聴いてしばしばわずらわしく感じる饒舌さとは無縁な、実に明快でインスピレーション溢れる表現が大変好ましく思えます。

サンサーンスの音楽は、いまいち好きになれないという方でも、この若書きの作品を一聴されることをお薦めします。大作曲家の隠れた名曲!

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