それに相応しい作品を完成すべく作曲に取り組みましたが、
健康を害したために締め切りまでに完成できなかったとか、
ユダヤ人だったために理不尽な評価しか得られなかったとか言われていますが、
いずれにしても作曲者の意図を叶えることはできませんでした。
メンデルスゾーン自身もこの曲が気に入らなかったのか、完成後も度々改訂を繰り返し、出版されたのは死後20年以上が経過した1868年のこと。
作曲順では第2番になるはずのものが、出版順から第5番とナンバリングされました。
尚、標題の『宗教改革』は、作曲の経緯に加え、
第1楽章には有名なドイツの讃美歌「ドレスデン・アーメン」が、
終楽章にはマルチン・ルター作曲のコラール「神は我がやぐら」の旋律が使われていることによります。
20〜21歳の頃に書かれたこの曲は、『スコットランド』『イタリア』ほどの人気はありませんが、
今日エントリーするダヴァロス/フィルハーモニア管の演奏で聴くと、若々しい力強さや敬虔な信仰心に加えて、ノスタルジックな思いも込められた、なかなかの力作だと感じます。
第1楽章:Andante-Allegro con fuoco
長かった暗闇の世界にようやく夜明けを迎えるような趣の序奏部。
終わりには、敬虔なドレスデン・アーメンが奏され、曲の象徴性が明示されます。
主部のアグレッシヴな音楽は、世俗化された教皇位や、堕落した聖職者への怒りが込められているのでしょうか。
第2楽章:Allegro vivace
ボヘミアの民族舞踊を思わせるような、ノスタルジー溢れる音楽と感じます。中間部では鳥の鳴き声や、風のそよぎが…。
第3楽章:Andante
終楽章への序奏的な意味合いを持つ、身を切るような悲しみを湛えたこの楽章は、
後にシューマンが書いた第2交響曲の第3楽章の下敷きになったのではと、ふと思いました。
第4楽章:Andante con moto-Allegro maestoso
休みなく続く終楽章は、ルターの作曲した「神は我がやぐら」の旋律が奏され、勝利に向かって、勝利に向かって勇壮に盛り上がっていきます。
私が記憶する演奏の中では、最も曲想に相応しい熱演だと思います!