最近聴いたCD

D.ショスタコーヴィチ:24の前奏曲 op.34 

タチアーナ・ニコラーエワ(ピアノ)


ショスタコーヴィチ26歳の1933年に着手され、翌年に完成したもの。

ショパンの『24の前奏曲』と全く同様の順序で全調整が配列されており、

それをショパンへの畏敬の念ととるのか、或いはパロディーと解釈するのか…。


ただ、今日エントリーするタチアーナ・ニコラーエワの演奏を聴いていると、

個々の曲ごとに若き作曲家のロマンやファンタジーの中にも、機知と独創性に富んだシニカルな側面が垣間見れられて、

聴き手のインスピレーションが大いに刺激されると同時に、

全曲を一連の流れとして、絵巻物を見るように聴き通し得るという点で、

ショパンの作品と同様に、構成力にも長けていると言えるのでしょう…。

全24曲にわたって、ショスタコーヴィチの溢れいずる楽想に心が奪われる、珠玉のような作品集と感じられます!


第1曲Moderateの遠くから響いてくる夕べの鐘の音とも、オルゴールの響きとも取れる不思議な幻想の世界に始まり、

第2曲Allegrettoではミステリアスな世界へと、

第3曲Andanteでは、穏やかな心が、やがて行き場の定まらない不安定な世界へと移ろいゆくさまが、

第4曲Moderateではフーガが登場して、精神的な高みへと止揚していきます!

第5〜9曲は、諧謔的や滑稽味が表現された音楽が続き、

第10曲Moderato non troppoでは、澄み切った悲しみが歌われます!

………

全曲のクライマックスは、第13曲Moderateの、弔いの鐘を伴なった葬送行進曲に始まり、

余韻を引き継いだ第14曲Adagioでは、強打される鐘の音が強まり、胸が張り裂けんばかりの深い悲しみに襲われます。

………


この作品は、ショパンの『24の前奏曲』と同列に並べうるほどに、純粋音楽としての完成度が高い作品と思えます。

もっともっと評価されて然るべきではないのでしょうか。

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