この曲の解説には、「イギリスの田園風景や民謡を髣髴させる牧歌的な作品!」と書かれています。
しかし、かの地を訪れたこともない私には、
第1楽章が開始されてすぐに、昭和20年代から30年代の前半にかけて、まだ大阪近郊のそこかしこに広がっていた麦畑で囀るひばりの声を髣髴して、
穏やかだった田園風景や、そこで暮らす人々の活気を懐かしく思い出しながら、穏やかな気持で全4楽章を聴き通しました。
イギリス音楽を聴くと、しばしばこんな懐かしさが蘇るのは、
学校時代の音楽の授業で歌った、「ヨナ抜き音階」で書かれた近代日本の唱歌や、「蛍の光」「故郷の空」などのスコットランド民謡が浸みこんでいるためなのでしょう。
中でもRVWの作品、とりわけこの曲は、『揚げ雲雀』と並んで、そういった感慨を強く起こさせる作品。
「ヨナ抜き音階」に郷愁を覚える方には、是非とも一聴をお薦めしたい、極め付きの作品と申しあげられるでしょう!
第1楽章は、前述したような印象の曲ですが、弦楽四重奏に追加されたヴィオラの響きが官能をくすぐるような、独特の味わい深さが漂います。
第2楽章の躍動する素朴なリズムには、思わず心が浮き立ってきます。
第3楽章の穏やかで懐かしい世界は、子供の頃に卓袱台を囲んで食べた夕餉の団欒を思い出します。
ほのぼのとした温かい雰囲気が醸される、極上の音楽!
民謡調で開始される第4楽章は、徐々に力強い舞曲調へと盛り上がっていきます。
最後には第1楽章の主題が再現、囀りながら蒼穹へと舞い上がるひばりを思わせるように、深い余韻を漂わせつつ曲は終わります。
イギリス弦楽四重奏団とノルベルト・ブリームのヴィオラによる演奏。
実はこの演奏しか聴いたことがないないのですが、ファンタジーに溢れた素晴らしい演奏だと感じています。是非、ご体験下さい!