作曲家として名声を高めるには、ウィーンで評価されることの重要性を認識していた彼は、
ボヘミア的な民族性やロマン的な情緒よりも、古典的構築性に重点を置きつつ、
僅か2週間で書き上げたのが、今日エントリーする弦楽四重奏曲第11番。
しかし演奏会場が火災に遭ったために、初演は延期され、しかもウィーン以外で行われたとか(初演地は不明)…。
そんな第11番は、彼の書いた14曲の弦楽四重奏の中でも、とりわけ穏やかで均衡がとれた楽想を有しており、
前述した理由から、これまで彼の作品に描かれてきたボヘミアの自然と郷愁や、民族舞踊とは趣は異なりますが、
それでも親しみ易さが込められた詩情や、勇壮な力強さが聴き取れる作品となりました。
ドヴォルザークらしい特徴にこそ欠けますが、
逆に他の作品とは趣の異なった、地味ながらも繊細で美しい旋律からは、
郷土色を抜きにした、メロディー・メーカーとしての天賦の才能が存分に発揮されていると感じます!
第1楽章は、黄昏時の田園風景を思い浮かべるような、穏やかさに支配されたもの。
大きな感情移入こそありませんが、微細に映りゆく心情の変化が表現された、心に沁み入る美しい音楽です。
第2楽章は、一服の風景画を見るような趣を有した曲。
牧神のまどろみを想起するような穏やかな音楽…。
第3楽章スケルツオでは、感傷がこみあげてくるようなトリオ部が印象的!
第4楽章は、感傷にこそ陥りませんが、郷愁を感じさせる爽やかな音楽です!
メランコリーに偏らない、爽やかな郷愁が感じられる佳曲だと思います。
暑さがぶり返した折にでも、一度聴いてみてください。