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A.ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第11番 ハ長調  

シュターミッツ弦楽四重奏団


1881年、『スラブ舞曲第1集』の大成功によって作曲家としての名声を獲得しつつあったドヴォルザークに、ヘルメスベルガー四重奏団から、ウィーンで初演するための作品を委嘱されました。

作曲家として名声を高めるには、ウィーンで評価されることの重要性を認識していた彼は、

ボヘミア的な民族性やロマン的な情緒よりも、古典的構築性に重点を置きつつ、

僅か2週間で書き上げたのが、今日エントリーする弦楽四重奏曲第11番。

しかし演奏会場が火災に遭ったために、初演は延期され、しかもウィーン以外で行われたとか(初演地は不明)…。


そんな第11番は、彼の書いた14曲の弦楽四重奏の中でも、とりわけ穏やかで均衡がとれた楽想を有しており、

前述した理由から、これまで彼の作品に描かれてきたボヘミアの自然と郷愁や、民族舞踊とは趣は異なりますが、

それでも親しみ易さが込められた詩情や、勇壮な力強さが聴き取れる作品となりました。

ドヴォルザークらしい特徴にこそ欠けますが、

逆に他の作品とは趣の異なった、地味ながらも繊細で美しい旋律からは、

郷土色を抜きにした、メロディー・メーカーとしての天賦の才能が存分に発揮されていると感じます!


第1楽章は、黄昏時の田園風景を思い浮かべるような、穏やかさに支配されたもの。
大きな感情移入こそありませんが、微細に映りゆく心情の変化が表現された、心に沁み入る美しい音楽です。

第2楽章は、一服の風景画を見るような趣を有した曲。
牧神のまどろみを想起するような穏やかな音楽…。

第3楽章スケルツオでは、感傷がこみあげてくるようなトリオ部が印象的!

第4楽章は、感傷にこそ陥りませんが、郷愁を感じさせる爽やかな音楽です!


メランコリーに偏らない、爽やかな郷愁が感じられる佳曲だと思います。

暑さがぶり返した折にでも、一度聴いてみてください。

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