第1番は作曲家自身が、番号付き交響曲として最初に命名したもので、発表に値すると認めた最初の交響曲と考えて差支えないのでしょう。
今日エントリーするヨッフム指揮するシュターツカペレ・ドレスデンの演奏は、1953年にリンツ稿に基づいてノヴァークが校訂した原典版と呼ばれるものですが、
私自身は版による違いを掌握しておりませんので、それに関するコメントは控えさせていただきます。
敬虔なカトリック信者であった彼は、交響曲第5番以降では、宇宙に存在する事物や現象を感じさせる作品を書いていますが、
初期の第1番の交響曲では、彼の生誕地であるリンツ近郊の自然の息吹や、伝統的な民族色の香りが色濃く感じられる作品に仕上がっているように感じられます。
第1楽章冒頭は、中世の騎士道を思わせる、勇壮さの中にも則を越えない力強さが漲った音楽。
そして第2主題では、穏やかな自然にどっぷりと身をゆだねるような、いかにもブルックナーらしい世界が拡がります。
第2楽章は、鬱蒼とした夜の森の中を思わせる音楽。オーボエやクラリネットので奏でられる響きからは、そこに住む人々の、穏やかな悦びが伝わってきます。
躍動感にう溢れた、叩きつけるようなリズムで開始される第3楽章。
トリオ部の管楽器、とりわけホルンの響きの美しさには、思わず聴き惚れてしまいます。
第4楽章はアグレッシヴな情熱が迸るような音楽。
コーダに向かっては、民族の勝利を讃えるように、森羅万象が鳴り響くような趣を感じます!
ここ1週間ほどは、陽の光が射すことの少ない天候が続いていますが、
鬱蒼とした木立に囲まれた我家で、SKDの美しい響きでこの曲を聴いていると、不思議に力が漲ってくるのです。
野人(?)ブルックナーの、初期の名作だと感じ入りました。