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カール・オルフ:
世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」

G.ヤノヴィッツ(S)・F=ディースカウ(Br)・G.シュトルツ(T)
オイゲン・ヨッフム指揮  ベルリン・ドイツ・オペラ管・合唱団他


ドイツの作曲家であり音楽教育者でもあったカール・オルフ(1895-1982)が遺した、最大の功績と評価される作品。

複雑なリズム・ポリフォニー・不不協和音に満ち、大センセーションを巻き起こしたストラヴィンスキーの『春の祭典』の初演(1913年)から24年後の1937年、

同様に原始的なエネルギーが横溢しつつも、極めて単純で明快なスタイルを有した『カルミナ・ブラーナ』によって、オルフの名は全ヨーロッパに知れ渡りました。


1900年代の後半になってからは、20世紀が生んだ最高傑作の一つとして多くの人々に受け容れられた『春の祭典』ですが、

1937年当時の聴衆には、同じように原始的なエネルギーと独特の変拍子をもつセンセーショナルな音楽でも、こちらの方が親しみ易く感じられたことは、想像に難くありません。:


曲名の「カルミナ・ブラーナ」とは、ボイエルン詩歌集の意味!

ドイツ南部のベネディクト派ボイエルン修道院で発見された、11〜13世紀の頃、放蕩学生によって書かれたと推測される、恋・酒・教会に対する風刺などが描かれた約300篇の詩歌集から、24曲を選んで曲が付けられました。

曲の内容は、以下に記す第1曲「世界の支配者、フォルトゥナ(運命の女神)」の歌詞によって、概ね推測することが出来ます。

おお、フォルトゥナ(運命の女神)!
汝はかの月の面の変わるに似て、
欠けては満ち、満ちては欠ける
人の世の心なく、
喜びも苦しみも意のままにして、
人の心を弄ぶ
貧困も権勢も、氷の如く消えゆく

24の詩には、運命の女神に翻弄される人間たちの儚さが歌われており、

どうせそんな人生を送るのなら、いっそ愉しく気ままに生きようじゃないか!

そんな内容が、原始的で素朴な、血沸き肉踊る音楽として、屈託なく表現されていきます。


エントリーする演奏は、ヨッフム指揮するベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団他によるもの。

これは、私が聴いたこの曲の中では、頭抜けて原始的エネルギー感に満ちた、粗野で生々しい表現が感じられる演奏です!


冒頭の「世界の支配者、フォルトゥナ」(最後にも登場して、曲を締めくくります)での、エネルギーの爆発を予兆させる、抑制された緊迫感の素晴らしさ!

第1部「春」では、生命誕生の神秘・奇跡を髣髴させるような神秘的な雰囲気や、一転して狂乱の場が…

同じく「草原にて」草いきれが立ち込める中、若者たちの嬌声も交えた、素朴で楽しげな原始的な音楽が…

第2部「酒場にて」では、酔っ払いの嬌声、野卑さなどの百態が、見事に表現されています。

第3部「睦言」では、若者たちの戯言が、屈託なく表現されています…。


F.ディースカウをはじめとするソリスト、それに合唱の表現力も秀逸!

是非とも一聴をお薦めしたい、名演奏です。

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