最近聴いたCD

フレデリコ・モンポウ:『歌と踊り』(ピアノの為の) 

アリシア・デ・ラローチャ(ピアノ)


モンポウ(1893-1987)は、しばしば20世紀のスペイン・カタルーニャ地方の生んだ“ピアノの詩人”と称される作曲家。

今日エントリーする、ラローチャのピアノによる『歌と踊り』を聴いた印象については、

スペイン音楽の評論家として名高い濱田滋郎さんが、モンポウの音楽について「極めて繊細で、内気で、夢見がちな楽想を、ピアノの余韻に託した作曲家」と評されたライナーノートの文章を、そのまま引用させていただきます。


東日本大震災後の被災地の復旧の遅れに関する報道を聞くにつけ、梅雨時の鬱々とした気候が影響してか、気分の晴れない日々が続いているのですが、

久しぶりに聴いたこの曲のこの演奏!

ピアノのために書かれた13曲から成る曲集ですが、それぞれが「歌」の部分と「踊り」の部分によって構成されており、

「歌」の部分は、聴き手の心にそっと寄り添うように、

そして「踊り」の部分では、自ずと明るい気持へと導いてくれるような、

そんな癒しの音楽として気持よく聴くことができました。


『歌と踊り』は、一時期にまとめて書かれた曲集ではなく、

1921年から晩年に格までの60年間にわたり、生まれ故郷のカタルーニャ民謡を主に、折に触れて書き綴られたもの。

それぞれの曲を、気持が赴くままに聴くのがベターなのかもしれませんが…。


今日聴いて格別に印象に残ったのは、第1曲カタルーニャの古い物語歌「幼い花嫁」での、スペインの夜の気だるい雰囲気と、

マズルカを思わせる踊り部分の明るい雰囲気との対照の妙!

第5曲、どちらもモンポウのオリジナル作品ですが、寂しげな雰囲気を漂わせる歌の部分と、

蒼穹に響くカリオンの音を思わせる踊りの部分の懐かしい響き!

第8曲、同民謡「アメリアの遺言」の、痛切な悲しみが込められた旋律からは、メンデルスゾーンの無言歌「ベニスの舟歌」を髣髴させるような懐かしさすら漂います!


ラローチャの演奏からは、曲に対する慈しみや万感の思いが聴き取れる名演!

これまで馴染みの薄かったスペイン音楽ですが、このディスクは私の愛聴盤になりそうです。

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