今日エントリーする、ラローチャのピアノによる『歌と踊り』を聴いた印象については、
スペイン音楽の評論家として名高い濱田滋郎さんが、モンポウの音楽について「極めて繊細で、内気で、夢見がちな楽想を、ピアノの余韻に託した作曲家」と評されたライナーノートの文章を、そのまま引用させていただきます。
東日本大震災後の被災地の復旧の遅れに関する報道を聞くにつけ、梅雨時の鬱々とした気候が影響してか、気分の晴れない日々が続いているのですが、
久しぶりに聴いたこの曲のこの演奏!
ピアノのために書かれた13曲から成る曲集ですが、それぞれが「歌」の部分と「踊り」の部分によって構成されており、
「歌」の部分は、聴き手の心にそっと寄り添うように、
そして「踊り」の部分では、自ずと明るい気持へと導いてくれるような、
そんな癒しの音楽として気持よく聴くことができました。
『歌と踊り』は、一時期にまとめて書かれた曲集ではなく、
1921年から晩年に格までの60年間にわたり、生まれ故郷のカタルーニャ民謡を主に、折に触れて書き綴られたもの。
それぞれの曲を、気持が赴くままに聴くのがベターなのかもしれませんが…。
今日聴いて格別に印象に残ったのは、第1曲カタルーニャの古い物語歌「幼い花嫁」での、スペインの夜の気だるい雰囲気と、
マズルカを思わせる踊り部分の明るい雰囲気との対照の妙!
第5曲、どちらもモンポウのオリジナル作品ですが、寂しげな雰囲気を漂わせる歌の部分と、
蒼穹に響くカリオンの音を思わせる踊りの部分の懐かしい響き!
第8曲、同民謡「アメリアの遺言」の、痛切な悲しみが込められた旋律からは、メンデルスゾーンの無言歌「ベニスの舟歌」を髣髴させるような懐かしさすら漂います!
ラローチャの演奏からは、曲に対する慈しみや万感の思いが聴き取れる名演!
これまで馴染みの薄かったスペイン音楽ですが、このディスクは私の愛聴盤になりそうです。