バルトークはこれまでに収集した民族音楽の研究や、ピアニストとして時間を費やし、作曲には取り組みませんでした。
そして、3年の休養期間を置いたて発表された『ピアノ協奏曲第1番』『ピアノソナタ』では、
尖鋭的で荒々しいまでの推進力と、研ぎ澄まされた抒情を伴なった民族色豊かな作品へと、大きな進化をみせました。
同年に書かれたピアノ組曲風の『戸外にて』も、まさにそういった作品に匹敵するような、素晴らしい作品だと思います。
今日エントリーするディスクは、ブタペスト出身のピアニスト、ゾルターン・コチシュのピアノによるもの。
【第1巻】
第1曲「太鼓と笛」の冒頭、左手で奏される最低音部の、不均一にエネルギーが噴き出すような強烈なバーバリズム。
バルトーク音楽を聴く醍醐味が剥き出しで伝わってくる、迫力満点の演奏です!
第2曲「舟歌」は、満天の星空のもと、不安定な揺らぎに身を任せるような寂寥とした気分に支配された音楽です…。
第3曲「ミュゼット(バグパイプ)」は、活発でマジャールの熱き血潮が迸る、情熱的な民族音楽!
【第2巻】
第1曲「夜の調べ」の研ぎ澄まされた抒情。
夜のとばりに覆われた中で感じる大気の揺らぎ、明滅する星の瞬く世界に包まれて、
大自然の深い息吹が生々しく感じられる、大変に懐の深い音楽です!
第2曲「狩り」は、疾走するような騎馬民族的な躍動感が漲った、生命力に溢れた音楽!
コチシュの演奏は、作品に内蔵された強烈なバーバリズムと、鮮烈な抒情性を十全に表現した、素晴らしい演奏だと思います。