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ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第4番『街の歌』 

スーク・トリオ


ヨゼフ・ハーラ(P)
ヨゼフ・スーク(Vn)  ヨゼフ・フッフロ(Vc)


この曲が「街の歌」と呼ばれる理由は、

第3楽章の変奏曲の主題に、J.ワイグルの歌劇『船乗り仲間の恋人』中の三重唱「私の約束の先に」の旋律が用いられているからです。

1797年10月にウィーンで初演されたこの歌劇の中の三重唱は、瞬く間に街のあちこちで歌われるほどに親しまれていたために、このようなニックネームが付けられたとか。

そんなニックネームに相応しく、全体的に流れの心地良い、明るい気分の曲想です…。


力強くも優しい表情を込めてユニゾンで開始される第1楽章は、

颯爽とした軽快な流れの中で、時折歌い交わすヴァイオリンとチェロの優しさが印象的!

展開部での表情の変化の豊かさは、いかにもベートーヴェンらしいと感じられます。

第2楽章は、親しみ易く思いやりに満ちたチェロが奏でる旋律で開始され、それがヴァイオリンに惹き継がれていくところは、希望に満ちた青年ベートーヴェンを髣髴します。

後半部での、3つの楽器が情感を込めて歌い交わすさまは、さながら青空にたなびく雲のように自由で、崇高さすら感じられます。

先述した第3楽章変奏曲の主題は、ウキウキとした楽しげなもの。

それに続く9つの変奏とコーダは、変奏の名手ベートーヴェンならではの、多彩な音楽が楽しめます。

なかでも、第2変奏でのヴァイオリンとチェロの会話や、

第8変奏でのピアノのスタカートに乗って、ヴァイオリンやチェロが奏でる朗々とした旋律がとりわけ印象的!


今日ントリーするのは、1983年に録音されたスーク・トリオの演奏。

それぞれの楽器が穏やかに語り合う趣の、幸福感に満ちたベートーヴェン演奏として、しばしば取り出して愛聴している名盤です。

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