最近聴いたCD

M.ラヴェル:序奏とアレグロ 

アンサンブル・ウィーン=ベルリン


昨日エントリーした、クロマティック・ハープの特長をPRするために書かれた『神聖な舞曲と世俗的な舞曲』(1904年)に対抗するために、

その翌年に「エラール」商会は、同社のダブル・アクション・ハープのPRのためにラヴェルに依頼し、

それに応えて書かれたのが、弦楽四重奏とフルート・クラリネット・ハープのための作品『序奏とアレグロ』でした。

こちらの作品は、クロマティック・ハープの弱点とされるグリッサンドを多用していますが、

作品の優劣はさて置いて、

曲を聴いた印象では、表現の多様性という点で、現代のハープの原型となった「エラール」商会のハープに軍配が上がるように思えます。

クロマティック・ハープの方は、現在ではすっかり忘れ去られてしまいましたが、ドビュッシーの作品は今も高い評価を得ています。


友人に誘われたヨット旅行に出かけ直前に依頼を受け、何日も徹夜をしながら僅か1週間ほどで書き上げられたというこの作品ですが、

過当な販売競争のお蔭で、私達はかくも美しい室内楽の名曲を聴く幸運に恵まれたわけです。


早朝、深い森に眠る湖から立ち昇る早霧に包まれた大気の揺らぎや、

湧きいずる泉の清冽さ、

こずえを渡る風の音などから、

限りなくメルヘンチックなファンタジーの世界へと想像が拡がっていく趣の音楽!


曲名こそ『序奏とアレグロ』というそっけないものですが、

内容的には、バレー音楽『ダフニスとクロエ』第3幕の「夜明け」を髣髴させるような壮大な拡がりをもつ描写音楽であり、

同じく『マ・メール・ロア』を思わせる、メルヘンとファンタジーに富んだ作品だと思います。


演奏は、アンサンブル・ウィーン=ベルリンという、ウィーン・フィルやベルリン・フィルの名手たちによるもの。

豊潤な音色の美しさに、至福のひとときが楽しめる素晴らしい演奏です。

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