パリの楽器商「プレイエル」社が開発した新型の「クロマティック・ハープ」の販売促進のための作品をドビュッシーに依頼し、
それに応えて完成されたもの。
78本の弦が半音階的に配列されているために、急速なパッセージも容易に演奏できるという、
そんな特性を活かした作品ということなのでしょうか!
『牧神の午後への前奏曲』以降、ハープの音色を好んでいたドビュッシーは、大いに興味を示し、
直ちに作曲に取り組み、書き上げたのがこの作品です。
尚、同じパリのライバル会社で、ペダル・ハープの発売元である「エラール」商会は、
直ちにラヴェルに依頼して、その作品『序奏とアレグロ』で自社製品をPRしたとか…。
そんな過当競争(?)のお蔭で、近代フランスを代表するハープのための名作が、同時期に2曲誕生しました。
アルカイックな雰囲気を湛えたこの作品の前半部は「神聖な舞曲」。
白い衣装をまとって緩やかに舞う巫女たちの姿を思い浮かべるのですが、
それは微かな衣擦れの音と大気の揺らぎが感じられるような、厳粛さが漂った舞曲です。
後半部の活き活きとした動きを伴なう「世俗的な舞曲」では、
対照的に感情のうねりが、やがて官能的な高まりへと高揚していきます!
ハープの音色が、アルカイックな雰囲気を漂わせる、趣の深い佳曲!
エントリーする演奏は、マルティノン指揮するフランス国立管弦楽団によるものです。
前半部の禁欲的なまでの性格と、
後半部のエロチシズムを感じさせる官能の高まり、
これらが鮮やかに描き分けられた、大変に印象的な名演奏です!
ところで20世紀初頭のこの販売競争、どちらに軍配が上がったのでしょうか?