最近聴いたCD

W.A.モーツァルト:
ピアノソナタ第13番 K.333 

ダニエル・バレンボイム(ピアノ)


バレンボイムの演奏する、モーツァルトのピアノ・ソナタK.333!

先日、この演奏で第1楽章を聴いた時、

何かで読んで記憶の片隅に埋もれていた吉田秀和氏の文章、

「川の流れに沿って歩く人と、水に映るその人の影とが、二つであって一つ、一つであって二つであるのを見るような心地がしてくる」

こんな文面を、突然思い出しました。

思い起こせば、この文章に啓発されて買ったバレンボイムのモーツァルトのピアノソナタ…。

2〜3度聴いてCD棚の片隅に眠っていたディスクでしたが、

その神髄の一端が、ようやく垣間見えてきたのでしょうか。


3月11日の大震災で、自然の脅威を身に沁みて感じてしまった我々ですが、

そんな体験をした後に聴くこの曲は、ヒトと自然とが相和するような、そんな親しげな音楽として、心に沁み入ってきます。

特に第1楽章は、自然との親愛な気持が心地良く響いてくる音楽。

小川のほとりでせせらぎの音を聴きながら、

湧き上がる喜びや、ふと思い浮かぶためらいの気持ちが、極めて自然な流れの中に表出されているようで、

最近、彼のピアノソナタの中でも最も愛聴している曲(楽章)であり、演奏でもあります。


第2楽章のバレンボイムの落ち着きはらった穏やかな演奏は、繰り返し聴くほどに味わいが深まるもの。

対照的に転調が繰り返され、落ち着きどころのない展開部以降は、モーツァルトの心の動揺が表現されているのでしょうか。

微妙な心の襞までが表現された、奥深い洞察力を感じる演奏です。


第3楽章は、一転して天真爛漫な音楽が…。

終曲に向かっては壮大さ、力強さが加わって…。

K.333のソナタ、最近、底知れぬ奥深さを湛えた音楽と感じるようyになりました。

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