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アントニオ・ヴィヴァルディ:
『調和の霊感』op.3より第6番   

トレヴァー・ピノック指揮  イングリッシュ・コンサート管


1703年、25歳で司祭に叙階されたヴィヴァルディ(1678-1741)は、ヴェネチアにあるピエタ慈善院付属音楽院(オスペラーデ・デッラ・ピエタ)に奉職。

身寄りのない女子の孤児の教育の一環として音楽を教え、

その為の合唱曲や、とりわけ管弦楽のために膨大な数の作品を書き上げました。

彼は1717年にこの職を辞すまで、優れた指導力を発揮し、

ここの女生徒達が教会の礼拝で演奏する合唱や管弦楽は、ヨーロッパ全域から訪問する人々の称賛を集めたと言われています。


音楽院で奉職中に書かれた管弦楽曲の中から、人気のあった作品12曲をまとめ、op.3として出版したのが『調和の霊感』。

中でも第6番イ短調は、ヴィヴァルディの作品の中でも、『四季』に次いで知られた、人気の高い作品とされています。


ピノック指揮するイングリッシュ・コンサートの、古楽器による演奏をエントリーします。

生気溌剌としたピノックの演奏を聴くと、

孤児という境遇にあった思春期の女性が、この曲を演奏しながら将来の儚い夢へと思いを馳せている、

そんな彼女らの心象風景を髣髴させる、爽やかなセンチメンタリズムを感じるのです。


独奏ヴァイオリンが奏でる崇高なまでの美しさを湛えた旋律が、無限の蒼穹へと吸いこまれるように拡がっていく第1楽章!

Largoで奏されるゆっくりとしたテンポの第2楽章は、僅か14小節の短い楽章ですが、孤独な心境や夢みるようなロマンチシズムに溢れた、ヴィヴァルディの作品中でも最高に美しい楽章ではないでしょうか。

第3楽章は、きっぱりとした美しさを感じさせる音楽であり演奏!幸せな旅立ちを夢見るようです。

この曲を演奏する乙女たちは、どんな思いを込めていたのでしょうか!


感傷に陥らず、生気溌剌と演奏されているからこそ、逆に無垢な美しさが際立つ、そんなピノックの演奏だと感じました。

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