大げさですが、この曲を襟を正して聴いたのは、多分40年ぶりのことだと思います。
我が家のCD棚には、ポンキエッリ(イタリア:1834-1886)の『時の踊り』が含まれている「○○名曲集」と名付けられたディスクが何枚かありますが、
僅か10分程度のこの曲を通して聴いたことは、多分一度もありません。
高校生の頃にFMでトスカニーニの指揮で初めて聴いて、えらく気に入ったのですが、
小遣い銭に余裕がなかったために、誰の演奏だったかは記憶にはありませんが、クラシックには珍しい17cmシングル盤を買って繰り返し聴いているうちに、飽きてしまったという曲。
それ以来、この曲が始まると、常に退屈さを覚えるようになってしまって…。
先日、古い雑誌の記事を読んでいた時、久しぶりに「通俗名曲」なる言葉を目にして、急にそんな類の曲を聴いてみようと、思い立ちました。
そして、いの一番に採り出したのが、カラヤン/ベルリン・フィルによる「オペラ間奏曲&バレー音楽名曲集」。
掛け値なしに素晴らしい演奏ばかりが収録されているこのCDですが、
唯一『時の踊り』だけは、前述した理由で、碌に聴きもしていませんでした。
ヴィクトール・ユゴーの小説をもとに、歌姫ジョコンダの悲恋物語が描かれており、
『時の踊り』は、第3幕第2場、貴族の邸宅で開かれた仮面舞踏会の場面で踊られる舞踊音楽。
夜明けから夜までの時の流れを表出した、5つの場面から構成された音楽です。
これまでのイメージを払拭したうえで、気合いを入れ直して聴いたこの演奏からは、華麗な素晴らしいファンタジーが展開されました。
当時の感性がが未熟だったせいか、
或いは演奏がいまいちだったのか、理由は判りませんが、
45年前に繰り返し聴いていた頃には、決して得られなかった感慨!
通俗名曲と称され、私の心の中で『時の踊り』と同じような運命をたどった曲、実は結構あるのですが、
そんな曲をあらためて聴き直して、認識が覆された曲があれば、暫時アップしていくつもりです…。