最近聴いたCD

J.S.バッハ:
二台のピアノの為の協奏曲第1番(BWV1060)  

A.シフ(第1ピアノ)   P.ゼルキン(第2ピアノ)
カメラータ・ベルン  


バッハは晩年を過ごしたライプツィヒ時代には、聖トマス教会のカントル(合唱指揮者・オルガニストとしてミサを仕切る人)の要職を務める一方で、

アマチュア・オーケストラのトレーナーとしても活躍しましたが、

その教材として用いるために、自身の旧作や他の作曲家の作品を改作したものも含め、少なくとも13曲の1〜4台のチェンバロのための協奏曲を作曲しました。

「何故チェンバロ協奏曲か?」については、チェンバロ奏者として成長した息子たちと共演させるためだったとか。


今日はその中から、独奏部分をチェンバロではなくピアノで弾いた「2台のピアノのための協奏曲第1番」BWV1060をエントリーします。

ピアノの洗練された装飾音や、ニュアンス豊かな滑らかな進行、そして柔らかく美しい響きがこの曲想にピッタリという理由で、

A.シフとP.ゼルキンのピアノと、スイスの室内オーケストラ、カメラータ・ベルンによる演奏が、これまで聴いた中で、とりわけ素晴らしいと思います!


残念ながら、ブラインドでピアノの機種を聴き分けられるほどの聴覚を持ち合わせてはいませんが、

二人の名手がベーゼンドルファーを弾いたバッハの協奏曲、とりわけBWV1060を聴くと、

音楽の根源のところに内包されている躍動感、

それは旋律とリズムと楽器の音色が三位一体となった、絶妙な調和から生まれてくるものなのでしょうが、

そんな躍動感が、静謐で心地良い感動を伴なって、心の奥深くに伝わってくるように感じられるのです。


第1楽章では、華やかさのなかに、極上の愉悦感を感じさせつつ…。

第2楽章では、淡々としたテンポの中、思索することの喜びに浸れる、知的な満足感を伴なって…。

そして第3楽章では、澄み切った青空や、舞い上がる鳥の囀りが…。

聴き込むほどに味わいが深まる、素晴らしい演奏だと思います!

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