その年の12月には、高名なハンス・リヒター指揮するウィーン・フィルの演奏で初演されました。
彼はこの曲を「ブラームスの英雄交響曲」と称したそうですが、
その理由については、とりわけ終楽章の緊張度の高い勇壮さのためと分析する向きが多いようです…。
私がこの曲を聴くようになった昭和40年頃のライナー・ノートには、必ずこの副題(?)が添えられており、違和感を抱いたものでしたが…。
今日エントリーするのは、バーンスタイン指揮するウィーン・フィルによる演奏で、1983年に収録されたものです。
第1楽章冒頭の二つの音のフレーズは、あたかも大きなため息を髣髴させるもの!
当方の想像する内気でシャイなブラームス像と見事に一致したものですから、「あぁ、なるほどな!」と強い説得力を感じ、一挙に曲に惹き込まれていきました。
この曲には、その頃に結婚が噂されていた、ヘルミーネ・シュピースという24歳年下のアルト歌手への恋愛感情が反映されていると言われているのですが…。
バーンスタインの演奏からは、過ぎ去った日々への回想と、
4〜5年後の晩年に書かれた交響曲第4番に見られるような諦観の念が、全4楽章を通して聴き取れ、
私のイメージする晩年のブラームスの曲想に、最もマッチした演奏と思えるのです…。
第1楽章では、決断に至れない、鬱々とした孤独な心境が…
第2楽章では、幼かった頃の楽しい想い出の日々が…
有名な第3楽章は、フランソワーズ・サガンの小説『ブラームスはお好き』を原作とした映画『さよならをもう一度』のテーマ曲。
美しくもメランコリーな心情が表現されています…
そして終楽章開始部の不穏な心境は、やがて頑ななまでの意志で克服され、最後は祈りを思わせるように、心安らかに終結します…。
全4楽章がピアノで終わるという、当時としては珍しい構成の作品。
作曲家の複雑な心境が素直に吐露されたと感じられる、バ−ンスタイン/ウィーン・フィルの名演だと思います。