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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番 op.131  

ラサール弦楽四重奏団


高い芸術性を備えた、室内楽の最高峰に位置する作品!

ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲へのこのような評価に、素人ながらもろ手を挙げて賛成する一人です。

室内楽に馴染めなかった40年前の学生時代から、これら5曲は繰り返し聴いてきましたが、

中でもop.131は、どんなに大きな精神的ダメージを受けていた時に聴いても、心に沁み入ってきた曲だったと記憶しています。

バリリ弦楽四重奏団のLPでしたが、

この演奏を聴くことによって癒された当時の懐かしい想い出は再現させることなく、心の奥に大切にしまっておこうと思っています…。


今日エントリーするのは、

4つの楽器が奏で合う絶妙の対話と、

透徹したアンサンブルがもたらす緊張感によって、

全7楽章を通して崇高さと至高の美の世界が展開される、ラサール弦楽四重奏団(1977年録音)の演奏です。


第1楽章は、4つの楽器が奏で合う悲痛さを伴なった幽玄な響きによって、

深遠な魂の世界へと誘われるような、崇高なまでの高みを感じさせる音楽。


第2楽章は4つの楽器のユニゾンの効果によるのでしょうか、

緊張感の中に軽みすら感じられる演奏は、どこまでも澄みきった美しいもの。


極めて短い第3楽章は、長大な第4楽章への期待を高めるような、絶妙なイントロの役割…!


第4楽章の変奏曲!

ラサールの演奏では、主題こそさりげなく提示されますが、

そぞろ歩くようなテンポで変奏されていく音楽は、それぞれに人の思索の深遠さを垣間見るようで、

かつ変奏が進むごとに深みを増していくように感じられる充実したひととき…。


第5楽章(プレスト)は、丁々発止としたやり取りの中にも、

お互いに呼びかえし、同意する瞬間が随所に聴き取れる、

自由闊達な心の充実を表現した、これも素晴らしい音楽だと思います。


第6楽章では、孤独な心境に立ち戻ったように寂しげな旋律が奏でられますが、

しかしそれぞれの楽器が優しくその旋律をリピートするさまは、

励ましよりも何よりも、理解をしてくれる人の存在に心が癒される、

そんな思いが切々と伝わってくるのです。

まさにベートーヴェンのみが創り得た、至高の芸術!


そしてアレグロで奏される力強い終楽章は、

第9交響曲の終楽章のように創造された歓喜ではなく、

迸り出る心からの喜びを表現した、極めて人間的な音楽ではないのでしょうか!


委託された作品ではなく、自らの想像力の赴くままに書かれたと言われるこの作品。

私自身は、彼の全作品中の最高傑作だと信じ続けています…。

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