和訳された歌詞を一読すると、第2、5曲などのようにオカルト的とも思える内容も含まれていますが、
曲想から推して、「夏の夜の一場の夢物語」と捉えて味わえば、作曲者の意図に反することにはならないと思います。
元来はピアノ伴奏による歌曲集でしたが、後に作曲者自身によってオーケストラ版に編曲されることによって、爽やかさの中に、より馥郁とした香りが漂う音楽へと変化したように感じます。
【第1曲:ヴィラネル】
ヴィラネルとは恋人の名。
若い二人の夢みるような幸福感と、その中に潜む一抹の不安感が見事に表現された曲!
【第2曲:薔薇の精】
夜会で胸に飾った薔薇が、夜ごと枕元で少女に語りかけます。
香り立つように濃密な夜の雰囲気の中、後半部の淋しげな儚さが、胸に響きます。
【第3曲:入り江の畔】
恋人を亡くした漁夫の悲しみの歌。突き刺すような心の痛みの中にも甘美さが漂う、ベルリオーズらしい音楽。
【第4曲:君なくて】
去っていった恋人に呼び掛ける歌。心にぽっかりと空いた虚しさが際立った、印象的な佳曲です。
【第5曲:墓地で】
悲しみ、恨み、後悔などが虚空にたなびく、そんな諦めの心情が歌われているのでしょうか。
【第6曲:見知らぬ島】
永遠の愛を求めて船出する娘を歌ったもの。
帆に風をはらんだ船が、希望に満ちて航海に旅立つような、前途洋々とした華やかさが感じられる曲。
エントリーするのは、アンネ・ゾフィー・フォン・オッターのメゾ、レヴァイン/ベルリン・フィルによる演奏です。
流麗で、爽やかさと濃密さが巧みに表現されたオーケストラ伴奏。
それに乗って歌われるオッターの歌唱は、上品な質感を伴なったもので、
曲の美しさを最高度に表現したものと感じました。
とりわけ第2、4曲の虚ろな心の表現は、絶品だと思います!