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R.シュトラウス:交響詩『ドン・キホーテ』  

ヨーヨー・マ(チェロ)
小澤 征爾指揮  ボストン交響楽団


セルヴァンテスの小説『ドン・キホーテ』を題材とした、「大管弦楽の為の、騎士的な性格の主題による幻想的変奏曲(10の変奏)」という副題を持つこの曲は、

独奏チェロがドン・キホーテを、独奏ヴィオラがサンチョ・パンザを受け持ち、

変奏ごとに、異なった場面が登場するという趣向。

解説を読んで曲の内容を理解するよりも、ひたすら音を聴いて想像を膨らませる方が、絶対に面白い…!


ヨーヨー・マのチェロ独奏と、小澤征爾指揮するボストン交響楽団による演奏をエントリーします。

小澤征爾さんが桐朋学園を卒業後、ギター片手にスクーターに乗って貨物船で単身フランスにわたられたことは、有名に武勇伝ですが…。

でも、1959年にブザンソン国際指揮者コンクールに優勝するまでの氏の行動は、

失礼ながら、夢を追い求めて諸国をさまようドン・キホーテと、ついイメージがダブってしまいます…。

そんなせいか、ヨーヨー・マをソリストに迎えたこの演奏は、若き日の自らの姿を思い描くかのように、

他の誰のよりも、初々しいロマンに溢れた演奏だと思うのです。


この演奏の魅力を書きだすと、それこそ限がないのですが、何点かをピック・アップすると…。

夢を追いつつ、空想と現実が入り混じった妄想に陥り、
やがてドン・キホーテと同化していく男の姿が、ロマンティックに描かれた導入部!
ヴィオラが表現するサンチョ・パンザのとぼけた性格づけも、味わいのある魅力に溢れています。

第2変奏での、金管楽器のフラッチャータンギングによる羊の啼き騒ぐさまの大胆な描写は、
リアリティよりもむしろ、「なんだろう?」と想像力が掻き立てられて、
その分、音楽を聴く楽しみが膨らんできます。

第7変奏では、木馬に乗って英雄気取りで空を飛んでいるつもりの、
ドン・キホーテの恍惚とした表情が目に浮かぶようです。
ウインド・マシーンの効果音が、想像力を掻き立てる素晴らしい場面!

第9変奏では、ファゴットの奏するとぼけた味わいと、英雄気取りで誇らしげに闊歩する音楽の底に流れるペーソスは、秀逸です!


一瞬たりとも弛緩することなく、次から次へと創造力が掻き立てられていくこの演奏は、

聴くたびに、あっという間に45分が過ぎてしまう、内容に富んだ演奏!

個人的には、私が聴いた小沢さんの演奏の中では、最も優れたものだと思っています!

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