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G.マーラー:交響曲第7番『夜の歌』  

ガリー・ベルティーニ指揮  ケルン放送交響楽団


マーラー自身が、この交響曲の第2、4楽章を「夜曲」(Nachtmusik)と名付けていることから、『夜の歌』という副題で知られています…。

一般的に副題付きの作品は、そうでないものと比べて人気の高い傾向がありますが、

この曲場合は例外で、彼の全交響曲中では、最も人気のない、地味な存在とされています。

曲の経過や帰結に必然性が乏しく、「構成的に難がある」「分裂症的」、

そういった評価に、不人気の理由が見いだせそうです…。

確かに捉えどころのない曲で、私も聴きながら集中力が散漫になって、途中で居眠りをしてしまうことも度々…。

今日初めて、以前に入手していたベルティーニ指揮するケルン放送交響楽団によるマーラー交響曲全集の中から、この曲を取り出しました。


第1楽章冒頭から不穏な空気が漂う演奏に、

「これまで聴いた演奏とは違うな?」と思い、俄かに期待感が高まってきました。

楽章全体が熱っぽさを帯びた、これまでに聴いたことのない解釈のようです。


第2楽章では、鋭く奏される木管や金管が、波立つようにこだましていく響き…。

何かが行進するような情景…。

この夜曲からは、魑魅魍魎が跋扈するような、不思議なメルヘンの世界が感じられて、演奏にどんどんと惹きつけられていきました。


第3楽章は、深い森の中を魑魅魍魎が一層激しく跳梁跋扈するさまを髣髴する、おどろおどろしくも幻想的な音楽…。この楽章にも、やはりメルヘンの世界が感じられます。


第4楽章は、憂鬱な或いは官能的とも採れる、ため息のような音楽で開始されます。

こちらの夜曲は、夜の静寂の中にナイチンゲールを始めとした自然の声を聴くような、静謐さに包みこまれていきました。


終楽章冒頭の、ティンパニが豪放磊落と思えるリズムを刻み、金管が高らかに主題を提示するところは、

「酒神バッカスへの讃歌」と思わんばかりの、マーラーらしからぬ華やかな音楽…。

しばしば能天気と評されるこの楽章の開始部を唐突と思わず、

これまでの楽章からの流れとしてすんなりと共感し得たのは、

ベルティーニの演奏が初めてのことでした。


早目のテンポで、弛緩することなく展開される第1〜第4楽章の詩情豊かな世界と、

おおよそマーラーらしからぬ豪放な世界が結びついたこの交響曲に、強い興味を抱くようになりました。

この演奏よりも20分も長く、この曲を理解した唯一の演奏とも言われるクレンペラー盤あたりから、あらためて聴き直したいと思います。

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