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G,フォーレ:チェロ・ソナタ第1番 op.109  

フレデリック・ロデオン(vc)  ジャン=フィリップ・コラール(p)


第一次世界大戦中の1917年、フォーレ72歳の時に完成された作品。

フォーレのチェロ作品と言えば、『エレジー(op.28)』『シチリアーノ(op.78)』のように、柔らかく上品で、洗練されたものが有名ですが、

この第1番ソナタは、50歳を過ぎた頃から患っていたと言われる聴覚障害に加えて、戦時中という時代を反映しているのでしょう、

一聴すると、そんな作風からは遠ざかった、地味で難渋な印象を受ける作品ではあるのですが…。


チェロのフレデリック・ロデオンが1952年、

ピアノのジャン・フィリップ・コラールは1948年の生まれですから、

このディスクが録音された1975〜78年にかけては20歳代の若者!

フォーレ晩年の作品から、実に瑞々しく、香り立つような抒情を引き出していると思えるのです。


第1楽章は、ぎこちない不安定さに支配されて開始されますが、

僅かな瞬間に漏れ聴かれる、フォーレ特有の滴るような美しい旋律には、

束の間の安らぎが訪れます。


ピアノの奏でる雨だれのような響きの中、チェロが孤独な心境を語る第2楽章冒頭部は、

至福の美しい時が流れていきます。

老境に達したフォーレの心に浮かぶ若かりし日々の懐かしい思いは、

曲の進行とともに強まっていきます…。

懐かしい感慨が滲み出た、幸福感に満ちた演奏!


第3楽章の、むせかえるように匂い立つ花々の香りを髣髴させる音楽には、

若き日のフォーレが慣れ親しんだ、華やかな社交界へのオマージュが感じられるのです…。

第3楽章での味わい深い趣には欠けるように思えますが、

第1、2楽章の瑞々しさは秀逸と感じ、このディスクをエントリーしました。

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