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ロッシーニ:歌劇『セミラーミデ』序曲  

リッカルド・シャイー指揮  ミラノ・スカラ座フィル管


啓蒙主義者として名を馳せたフランス18世紀の哲学者・作家ヴォルテールの戯曲『セミラーミス』をもとに、ロッシーニ自身が台本も書いた作品。

セミラーミスとは、戯曲に登場する紀元前9世紀のアッシリア帝国の女王の名前ですが、

オペラではセミラーミデと名を変え、その悲劇を描いた内容に仕立てられています。


とはいっても序曲だけを聴くと、

序奏部冒頭と主題に入る直前のアレグロ・ヴィヴァーチェの緊迫感に富んだ音楽が、僅かに悲劇を予兆させるくらいで、

あとはロッシーニらしい力強く軽快なノリのよい音楽が展開されています…。

彼の序曲は、どれを聴いても(多分)似たようなパターンで、聴衆のオペラへの期待感を掻き立てていきますが、

中でもこの曲はそれが最高度に発揮されているように感じられて、

彼の序曲の中では、一押しのものです。


ティンパニーのトレモロに乗って弦が力強く刻む緊迫感溢れる音楽に続いて、ホルンの四重奏は、騎士たちが女王セミラーミデへの忠誠を誓う音楽。

優しい音楽なのですがどこか頼りなげで、この時点から喜劇的な側面を感じるのです…。

第1主題は、心が浮き立つような音楽。

羽のように軽やかな弦の刻みは、楽しい予感にときめく胸の高まりを、

クラリネットやピッコロの木管群は、その周りを飛び回りながら囀る鳥たちのようで、

愉悦感に溢れた、素晴らしい音楽です。

そして、テンポと音量を、時間をかけて息長く盛り上げていく、お決まりのロッシーニ・クレッシェンド!

ここでも、木管群の彩りが愉しげな気分を、より一層盛り上げていきます。


今日エントリーするのは、リッカルド・シャィー指揮するミラノ・スカラ座フィルの演奏です。

収録ホール(Chiesa della Pace,Milan)の音響の問題か、残響に乏しいデッドな録音に感じられて、

とりわけクレッシェンド時の量感の乏しさに不満は残るのですが、

その分思いがけない木管楽器の微細な表情に聴覚(みみ)を奪われて、面白く楽しむことができました。

沈んだ気持が浮き立たせてくれるような、素晴らしい演奏だと思います!

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