しかし、初演を依頼すべく当時ロシアを代表するヴァイオリニストだったレオポルド・アウアーに楽譜を送った時には、難技巧ゆえに演奏不可能として拒否されました。
1883年になって、友人のヴァイオリニストのアドルフ・ブロッキーの尽力により、ハンス・リヒター指揮ウィーン・フィルの演奏でようやく初演にこぎつけたものの、
指揮者・オーケストラともに作品を理解しなかったために、聴衆の共感を得ることができず、
結果は惨憺たるものだったとか…。
しかし、この作品の真価を認めていたブロッキーによって、各地で繰り返し演奏されているうちに、
次第に評判が高まり、いつしか古今東西の名曲として、認められるようになったのです。
私がこの曲を初めて聴いたのは、高校時代でした。
カップリングされていたメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(ハイフェッツ・ミュンシュ/ボストン響)を目的に買ったLPでしたが、
メランコリー漂う美しい旋律に惹かれて、聴いたのは専らこちらの方…。
ただ第1、2楽章は好きでしたが、終楽章になると針を下ろしていたように記憶しています。
その後も、折に触れて様々な演奏でこの曲を聴きましたが、集中力が途切れて、大概は曲半ばで頓挫…。
全曲を聴き通したことは、殆どありません
今日、20数年ぶりにエントリーした演奏を聴きました…
第1楽章序奏部から、ライナー指揮するシカゴ交響楽団の冴え冴えと引き締まった音色が、空間いっぱいに拡がります…!
その中から浮かび上がるヴァイオリンの音色は、スリムで緊張感が漲った美しさを感じさせるもの!
非の打ちどころがない、絶世の美女を思い浮かべます…。
楽章全体に漲る白熱感は、指揮者ライナーならではの演奏でしょうか。
端正できりっとした印象で開始される第2楽章、凛々しく毅然としたヴァイオリンの音色の素晴らしさ!
しかし途中からはポルタメントがかけられて、すすり泣くような表情が…。
感傷に陥らず、しかし心震える絶妙な表現です!
第3楽章は、ヴァイオリンの名技に聴き惚れながら、ロシアの農民の舞踏を楽しむことができました…。
本当に久しぶりに心から楽しめたこの作品!
こんなに引き締まった演奏は、他では聴けないように思えます。
ハイフェッツやライナーの演奏に呪縛されていたことが、よーく理解できた次第です。