20世紀が生んだ大ソプラノ歌手エリザベート・シュヴァルツコップが、「無人島に持っていきたい1枚は?」に応えて挙げたという、いわくつきのディスクです。
以前、同じハンガリー出身のオーマンディによるR,シュトラウスの『ばらの騎士』のワルツを聴いて、ウィーン訛りのない、純粋無垢なストレートさに感動したことがありました。
ですから、シュヴァルツコップの言葉と併せて、「ハンガリーの指揮者は、ワルツに関して独特の嗅覚を持っているのかも…」とか、
「あの謹厳実直で厳つい演奏をするオッサンの振るワルツが、名歌手を感動させるとは、一体どんな…」と、あれこれ想像を巡らせていたものです。
念願かなって、昨日初めて聴いた次第ですが、その中からJ.シュトラウス2世の『ウィーン気質』をエントリーします。
この曲は、1872年にシュトラウス2世がアメリカ大陸へ演奏旅行へと旅立つにあたり、
陽気で明朗で、優雅な感傷性を愛するウィーンの人々の気質を、音楽によって紹介する意図をもって書かれたとか…。
良い意味で、「シュトラウスの音楽には、こんな側面もあったのだ!」と、思わず唸るような演奏でした。
その前奏部は、研ぎ澄まされた弦によって奏でられる、清冽さ極まる透徹した美しさ!
あまりにも透徹した美しさに、思わず目頭が熱くなってしまいました。
シュトラウスの旋律から得た初めての感慨で、こんな体験ができただけでも、聴いた甲斐がありました!
前奏部に続くワルツは、ウィーン風のリズムにおもねる様子など微塵も感じられない、潔いまでに明確でシンフォニックなもの!
ニュー・イヤー・コンサートでお馴染みの独特の揺れなどは、一切感じられません。
オーマンディの演奏とは、明らかにアプローチが違いますし…。
このワルツのリズムをを受け容れられるか否かで、評価は大きく変わってくると思います。
シュヴァルツコップの発言の中の一部だけが独り歩きして、手放しで称賛しているかの如くに伝えられている、
それが実情のように思えます。
私も時間をおいて、あらためて一から聴き直してみたいとは思いますが…。