最近聴いたCD

R.シューマン:クライスレリアーナ op.16 

マレイ・ペライア(ピアノ)


1838年、シューマン28歳の時に書かれた作品。

曲名の由来は、シューマンが自己の芸術の指針として仰ぎ、作家・画家・音楽評論家でもあったE.T.A.ホフマンの作品集「カロー風幻想曲」、

その中の一編で、空想的な音楽物語『クライスレリアーナ(「クライスラーに関すること」の意)』から採られたもの。

クララの父に結婚を反対されていたシューマンは、

物語の主人公クライスラーの満たされないロマンスを我が身に置き換え、

彼女への思いの丈を込めて書かれたと言われる作品です。


従来好きだったのが、アルゲリッチ盤(1983年録音)!

最初の一音が鳴り響いた瞬間から、情熱的でインスピレーションに溢れた音の世界に惹き込まれたものでした。

随所に清らかな瞬間が訪れるこの演奏、若者らしい自由奔放さを好ましく感じていたのですが、

最近は年齢のせいか、この奔放さにやや違和感を抱くようになってきました。


で、今日エントリーするのは、マレイ・ペライアが1997年に録音したものです。

シューマンの情熱的な思いが真摯に語られているように思えて、最近は専らこちらのディスクを愛聴しています…。


【第1曲:最高に激しい動きをもって】
確固とした真摯で一途な情熱が、ひしひしと伝わってきます!

【第2曲:非常に親密感を込めて、あまり速くなく】
内気な一人思いを感じさせる演奏ですが、曲が進むにつれて、情熱は高まります!

【第3曲:非常に激しく】
3曲目から、ペライアの真骨頂が発揮され始めます。優しさ・思いやりの中に濃密なロマンが感じられる素晴らしい演奏!

【第4曲:大変ゆっくりと】
優しさに満ちた音楽。気高い憧れを感じさせる、中間部の絶妙の呼吸!

【第5曲:極めて活き活きと】
泉が湧きいずるように、瑞々しい感性が迸る演奏です。真珠の光沢を思わせる音色が、微細に変化すらさまは素晴らしい聴きもの!

【第6曲:大変ゆっくりと】
大海原に漂いながら聴く子守歌のような深い安らぎは、クララの愛?曲が進むにつれて高まる幸福感!

【第7曲:非常に早く】
緊迫感を伴なって高揚した情熱は、不安定に収束します…。

【第8曲:急速に戯れるように】
戯れというか、諦めというか、どこか捨て鉢な心境が感じられる終曲です。一見燃え尽きて灰のようになった炭が、中心部は真っ赤に燃えているといった趣の曲…。クララへの変わらぬ愛を表現しているのでしょうか。


クララとの結婚が許されないながらも、

高まる情熱と幸福感が迸り出るような、

人間味に溢れた素晴らしい演奏だと思います。

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