最近聴いたCD

P.チャイコフスキー:『四季』(12の性格的小品) 

ウラジィミール・トロップ(ピアノ)


ペテルブルグの月間音楽誌『ヌーヴェリスト』は、

1876年の年間企画として、各月のロシアの情景を詠った詩を選び、

その詩にマッチしたピアノ曲をチャイコフスキーに依頼し、

詩とともに1年間、毎月雑誌に掲載されました。

例えば、「1月:炉辺」・「2月:謝肉祭」・「3月:雲雀の歌」…、

そういった具合にです。


後年「12の性格的小品」という副題が付けられて出版されたピアノ曲集『四季』は、月ごとの自然の情景や民衆の生活が描写された音楽。

ですから、我々に馴染み深い流麗・メランコリックな旋律や、絢爛豪華なオーケストレーションを特徴とする作品、

交響曲でいえば後期の第4〜6番、

『白鳥の湖』『眠りの森の美女』『くるみ割り人形』といった三大バレー音楽、

或いは『ピアノ協奏曲第1番』や『ヴァイオリン協奏曲』、

これらの作品からイメージする曲想とは異なり、

どちらかというと、素朴な印象を受ける作品集です。


チャイコフスキーの作品と言えば、少しメランコリーな美しい旋律の曲ですよね!

「1月:炉辺で」では、チロチロと燃える炎にまどろみに誘われるような、寛いだ気分が…

「3月:雲雀の歌」は、我々日本人がイメージする雲雀の囀りとは異なった、淋しげな曲…
ラモーのクラヴィーア曲のようにも聴こえます。

「4月:待雪草(スノー・ドロップ)」とは、雪どけ時に最初に咲く白い花。
可憐で密やかな、大変に美しい曲です…

「5月:白夜」は、夜空に揺れながら輝くオーロラを髣髴します…

「6月:舟歌」は、小舟に揺れながら、夢心地で満天に輝く星座を眺めるような感傷的な音楽…
大変に有名な曲です!

「10月:秋の歌」は、冬を間近に控えた殺伐とした風景に、メランコリーな気分へと誘われるよう…

「11月:トロイカ」は、広大な雪原を疾走するトロイカを描いていますが、メルヘン的な趣を有する曲!

「12月:クリスマス」は、夢の中で揺蕩うような、気まぐれなワルツのリズムが印象的。
一年の終わりを寛いで迎える、幸福な様子が描かれているようです!


もっと情緒纏綿とした演奏も可能なようにも思いますが、

過剰な感傷を投入しないトロップ盤は、しみじみとした味わいが感じられる佳演だと思います。

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