国民音楽協会定期演奏会で、先輩作曲家でもあるヴァンサン・ダンディの指揮で初演される予定でした。
しかし、当日は9つの作品がプログラムに組まれており、指揮者が無断で第2、3楽章を削除して演奏しようとしたため、
怒ったドビュッシーは譜面を引き上げて初演を中止したとか。
結局彼の生前に演奏される機会は一度もありませんでした。
第1楽章の冒頭の管弦楽部分、弦や木管が歌い交わすさまは、穏やかに広がる大海原の情景を髣髴させるもの。
そしてピアノのめまぐるしい動きを聴くと、海面に飛び散る波飛沫や光の変化をイメージし、
後に書かれた代表作『海』(1905年)を思い浮かべてしまいます。
第2楽章は、月の光に輝く穏やかな夜の海を思わせる、極めてロマンティックな音楽。
静けさの中に、大気のそよぎ、鳥の声、海鳴りの音などが聴き取れるようです…。
休みなく続く第3楽章の活気に満ちた音楽は、パリ万博で聴いたジャワ音楽の影響がみられるそうですが、言われてみれば確かにそのような…。
大団円へと向かうように、曲は輝かしさを増しながら盛り上がっていきます。
フォーレの音楽のような甘美さ、ポスト・ロマンティシズムの萌芽など…、
ドビュッシーは、この時期伝統的な音楽との狭間で試行錯誤していたと言われます。
書法的に違和感があることは否めないものの、
音楽的には大変に魅力のある、美しい作品だと思います。
とりわけ第2楽章は、臨海学校で行った瀬戸内海の海辺の夜の、何とも言えない穏やかな雰囲気を思い出し、懐かしさがこみ上げてきました!
ドビュッシーの作品中でも、最も親しみを感じている一曲です。