最近聴いたCD

C.ドビュッシー:ピアノと管弦楽の為の幻想曲  

アルド・チッコリーニ(ピアノ)
ジャン・マルティノン指揮  フランス国立放送管  


1890年4月に完成されたドビュッシー初期の作品。

国民音楽協会定期演奏会で、先輩作曲家でもあるヴァンサン・ダンディの指揮で初演される予定でした。

しかし、当日は9つの作品がプログラムに組まれており、指揮者が無断で第2、3楽章を削除して演奏しようとしたため、

怒ったドビュッシーは譜面を引き上げて初演を中止したとか。

結局彼の生前に演奏される機会は一度もありませんでした。


第1楽章の冒頭の管弦楽部分、弦や木管が歌い交わすさまは、穏やかに広がる大海原の情景を髣髴させるもの。

そしてピアノのめまぐるしい動きを聴くと、海面に飛び散る波飛沫や光の変化をイメージし、

後に書かれた代表作『海』(1905年)を思い浮かべてしまいます。

第2楽章は、月の光に輝く穏やかな夜の海を思わせる、極めてロマンティックな音楽。

静けさの中に、大気のそよぎ、鳥の声、海鳴りの音などが聴き取れるようです…。

休みなく続く第3楽章の活気に満ちた音楽は、パリ万博で聴いたジャワ音楽の影響がみられるそうですが、言われてみれば確かにそのような…。

大団円へと向かうように、曲は輝かしさを増しながら盛り上がっていきます。


フォーレの音楽のような甘美さ、ポスト・ロマンティシズムの萌芽など…、

ドビュッシーは、この時期伝統的な音楽との狭間で試行錯誤していたと言われます。

書法的に違和感があることは否めないものの、

音楽的には大変に魅力のある、美しい作品だと思います。

とりわけ第2楽章は、臨海学校で行った瀬戸内海の海辺の夜の、何とも言えない穏やかな雰囲気を思い出し、懐かしさがこみ上げてきました!

ドビュッシーの作品中でも、最も親しみを感じている一曲です。

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