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W.A.モーツァルト:ピアノ協奏曲第17番 K.453  

ルドルフ・ゼルキン(ピアノ)
クラウディオ・アバド指揮  ロンドン交響楽団


この曲が作られた当時のモーツァルトは、ピアノの名手として二日に一度のコンサートをこなす、ウィーン楽壇の寵児として高い人気を誇っていました。

特に1794〜96年にかけては、自らの演奏会のために第14番〜25番の12曲ものピアノ協奏曲を作曲しています。

そんな中で、今日エントリーする第17番は、2か月前に作曲された14番と同じく、

ウィーンの高官の娘で、モーツァルトに作曲やピアノを師事していたアマチュアピアニストのブロイヤーにも弾けるように作曲されたもの。

技巧的に難しい部分はなく、

愛らしさと、木管楽器が多用された華やかな曲想を有するために、

大変に人気の高い作品の一つでもあります。


今日エントリーするのは、録音当時(1981年)78歳だったR・ゼルキンのピアノ、アバド/ロンドン響による演奏です。

1979〜88年ロンドン響の首席指揮者時代のアバドの演奏は、

心技ともに充実した瑞々しい才気と精彩に溢れたもので、

私は彼の録音したディスクの中では、この時期のものに最も共感を覚えています。

そしてこの演奏でも、ゼルキンの格調の高い演奏を最大限に生かすべく、才気煥発な解釈が、随所に聴かれるように思います。


第1楽章冒頭の管弦楽は、衒いのない若々しく愛らしい演奏なのですが、やや前のめり気味…。

そんなオーケストラの前奏を受けたゼルキンのピアノは、

「まあまあ、そんなに急がないで…」とたしなめるような、大人の風格を感じさせる演奏。

こんな微笑ましいピアノとオケの絶妙の対話が、全曲を通じて繰り広げられていきます。

第2楽章は、弦と木管の奏でる瑞々しいオーケストラの音色と、仄かな憂愁を湛えたピアノとの対話が、大変に味わい深く印象的!

変奏曲風の第3楽章は、モーツァルトの天真爛漫さが全開したような、大変に楽しい音楽!

中でもフルート、オーボエ、ファゴットの木管群の活躍は、歌劇『魔笛』の鳥たちの囀りを彷彿とさせ、いっそう興を盛り上げていきます…!


音楽好きを自認する私ですが、こんな天真爛漫なモーツァルトの音楽でさえも、聴くに堪えられない心境に陥ることが、時にあります。

特に避難所生活を送られる皆様には、ご心労が溜まってきていることと思いますが、どうかご自愛くださいますように、お祈り申し上げます。

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