時間が経つにつれて、オーケストラの美しい響きが無性に聴きたくなってきました。
そこで、無意識に取り出したのが、コリン・デーヴィス/ロイヤル・コンセルトヘヴォウ管のハイドンのザロモンセット(交響曲第93〜104番)。
被害の全容が明らかになるにつれて、気分は塞ぎがちになっていましたので、
「ストレス・フリーな曲…」という潜在的な気持が、ハイドンを選ばせたのだろうと思います…。
どの曲が聴きたいということでもなかったのですが、最初に収録されていた交響曲第93番という、馴染みのない曲を選びました。
「告別」「V字」「驚愕」「奇跡」「時計」など、標題が付けられた曲は、若い頃から良く知っているのですが…。
案の定、第1楽章が始まっても、以前に聴いたことがあるのかさえ、思い出せません…。
ハイドンの交響曲に関する私の興味は、その程度のもの…。
でも、音楽に飢えていたせいでしょうか。
今日聴くハイドンは、いつになく心に沁み入ってきます!
優しくってユーモアに富んだ愛すべき男の、愚直なまでに裏表のない生きざまを目の当たりにするような、健康的な音楽が鳴り響いています。
なかなかプラス志向に物事を考えることが難しい今の状況ですが、
美しくって、時折豪放磊落なユーモアに思わず苦笑してしまう、
そんな音楽が心地良く心に響き、最高の癒しと感じられます。
第1楽章、やや重々しげな序奏部が終わると、
主題部からは、根っからの明るさと、
饒舌に過ぎると思えても嫌味に感じられずに、かえって微笑ましくさえ思える、
そんな音楽が繰り広げられます。
第2楽章冒頭は、弦楽四重奏でそっと語り合うように開始されます。
弦の柔らかな響きの中に浮かび上がる木管の素朴な美しさは、
悲しければ泣けば良い!
でもやがて楽しい日々がやってくるよ!
前を向いて歩いて行こうよ!
そんな思いやり溢れるメッセージが伝わってくる音楽…。
第3、4楽章も同様に、大らかで前向きな音楽!
「元気を出して、前向きに進んで行こうよ」というメッセージに、ついつい結びつけて聴いてしまいました。