最近聴いたCD

F,メンデルスゾーン:オラトリオ『エリア』 

預言者エリア:クリスチャン・ゲルハーヘル(Br)
王女イザベル:ナタリー・シュトウッツマン(A)他
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮  
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団・合唱団


曲名の『エリア』とは、旧約聖書の列王記に登場するユダヤ人預言者の名前。

彼の生涯を取り扱った作品で、メンデルスゾーンの代表作であるばかりでなく、

古今東西のオラトリオ(宗教的題材をもとに、独唱・合唱・管弦楽から構成される、演技を伴わない大規模な楽曲)の中でも、最も著名な作品として知られています。


旧約聖書によると、

イスラエル民族の神エホバは、

イスラエルの王アハブがかの地に蔓延させた邪教バール(原始的多神教の一つ)を根絶するために、

「民衆にバールへの信仰心を捨てるよう、もし捨てなければ3年間一滴の雨も降らさないと説得するよう」

預言者エリアに対し、そのように伝えたところから、物語は始まります。


【第1部】
その地に赴いたエリアが起こす奇跡に対し、民衆は畏敬の念を抱きますが、

容易にはバール信仰を捨てることができなかったために(信仰とはそういうものでしょうね)、

予言通りに、3年間一滴の雨も降りませんでした。

それでもバール信仰を捨てない民衆に対し、

どちらが予言通りの奇跡を起こし得るかを目の当たりにさせて、どちらがまことの神かを知らしめるべく、バールに戦いを挑みます。

結果は、エリアが勝利し、彼を信じるようになった民衆とともに、邪教バールの預言者たちを殺戮。

そしてエホバに祈りを捧げ始めると、奇跡が起こり、激しく雨が降り始めました。


【第2部】
バール教の復讐が始まります。

王アハブは、3年間雨を降らせなかったり、バールの預言者たちを殺したのは、全てエリアの悪徳だと述べて、

イスラエルの民を再びバール信仰へと引き戻します。

民衆からも石もて追われ、心身ともに憔悴しきったエリアは、

天使に導かれて神の山ホレブに辿り着き、そこで神エホバの啓示を受けます。

エホバの力を得たエリアは、決意を新たに再び山を下りて民を説得し、

ついにはイスラエルをエホバの国へと導きました。

そして任務を終えたエリアは、火の馬に牽かれた火の車に乗って天に召される、

そう言った内容が歌われています。


今日エントリーするディスクは、メンデルスゾーン所縁のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏、指揮はブロムシュテットです。

2時間を超えるこの大作を、激情に偏ることなく見事にコントロールした、しかし極めて説得力の強い演奏が展開されます。

とりわけ心を惹かれたのは、若々しいゲルハーヘルの表現力。

第1部冒頭のレチタティーヴォでの、瞬時に聴き手を惹きつける語りの上手さ!

第2部第26曲のアリアでは、イスラエルの民に裏切られ、生きる力もなくした預言者の絶望感が見事に表現されており、

聴くたびに目頭が熱くなってきます。

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