彼の生涯を取り扱った作品で、メンデルスゾーンの代表作であるばかりでなく、
古今東西のオラトリオ(宗教的題材をもとに、独唱・合唱・管弦楽から構成される、演技を伴わない大規模な楽曲)の中でも、最も著名な作品として知られています。
旧約聖書によると、
イスラエル民族の神エホバは、
イスラエルの王アハブがかの地に蔓延させた邪教バール(原始的多神教の一つ)を根絶するために、
「民衆にバールへの信仰心を捨てるよう、もし捨てなければ3年間一滴の雨も降らさないと説得するよう」
預言者エリアに対し、そのように伝えたところから、物語は始まります。
【第1部】
その地に赴いたエリアが起こす奇跡に対し、民衆は畏敬の念を抱きますが、
容易にはバール信仰を捨てることができなかったために(信仰とはそういうものでしょうね)、
予言通りに、3年間一滴の雨も降りませんでした。
それでもバール信仰を捨てない民衆に対し、
どちらが予言通りの奇跡を起こし得るかを目の当たりにさせて、どちらがまことの神かを知らしめるべく、バールに戦いを挑みます。
結果は、エリアが勝利し、彼を信じるようになった民衆とともに、邪教バールの預言者たちを殺戮。
そしてエホバに祈りを捧げ始めると、奇跡が起こり、激しく雨が降り始めました。
【第2部】
バール教の復讐が始まります。
王アハブは、3年間雨を降らせなかったり、バールの預言者たちを殺したのは、全てエリアの悪徳だと述べて、
イスラエルの民を再びバール信仰へと引き戻します。
民衆からも石もて追われ、心身ともに憔悴しきったエリアは、
天使に導かれて神の山ホレブに辿り着き、そこで神エホバの啓示を受けます。
エホバの力を得たエリアは、決意を新たに再び山を下りて民を説得し、
ついにはイスラエルをエホバの国へと導きました。
そして任務を終えたエリアは、火の馬に牽かれた火の車に乗って天に召される、
そう言った内容が歌われています。
今日エントリーするディスクは、メンデルスゾーン所縁のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏、指揮はブロムシュテットです。
2時間を超えるこの大作を、激情に偏ることなく見事にコントロールした、しかし極めて説得力の強い演奏が展開されます。
とりわけ心を惹かれたのは、若々しいゲルハーヘルの表現力。
第1部冒頭のレチタティーヴォでの、瞬時に聴き手を惹きつける語りの上手さ!
第2部第26曲のアリアでは、イスラエルの民に裏切られ、生きる力もなくした預言者の絶望感が見事に表現されており、
聴くたびに目頭が熱くなってきます。