最近聴いたCD

カルル・マリア・フォン・ウェーバー
歌劇『魔弾の射手』序曲 

ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮  ウィーン・フィル


歌劇『魔弾の射手』は、ロマン派初期の作曲家ウェーバー(独:1786-1826)の代表作。

1821年に初演された当時は、ドイツ国内においてもイタリア歌劇全盛の時代でしたが、

ドイツの民話に題材を得て、鬱蒼とした深い森を舞台に、素朴なゲルマン民族の魂を歌いあげたこの歌劇は、

多くのドイツ国民から熱狂的に迎えられて、国民的な音楽として広く親しまれたと言われています。


古典派音楽から、後のメンデルスゾーンやシューマンへと続くドイツロマン派の幕開けとなった重要な音楽!

中学校の卒業を間近にひかえたちょうど今頃の時期に、

音楽の先生からそのように教えられ、聴かせてもらったのが、『魔弾の射手』序曲でした。

曲の冒頭部で4本のホルンが奏でる旋律は、「秋の夜半」という曲名で音楽の教科書に載っており、

授業で歌ったこともありましたが、何の感慨も抱けなかった曲。

そんな旋律をあらためてレコードで聴くと、ドイツの鬱蒼とした森林が思い浮かんできて、

「いつかは本場ドイツで、この曲を聴いてみたい」と思うほどに、感動したものでした。

この時の演奏が、フルトヴェングラー指揮するウィーン・フィルによるもの。

爾来47年が経過しましたが、未だにこれ以外の演奏では、途中で緊張感が途切れてしまうほどに、大変に思い入れの強い曲の一つです。


フルトヴェングラーの演奏には、他とは比肩し得ないと感じる、感動的な部分が2か所あります。

一つは、曲の前半部で第2主題(アガーテのアリア)が登場するところ…。

霧が晴れて、突然眼の前に大パノラマが広がるように、

予想すらできなかった神々しいまでの美しさを湛えた旋律が、登場します!


もう一つは、再現部が鎮まって全休止後…。

フォルテシモで和音が高らかに鳴り響いた後、

第2主題が僅かにアッチェレランドしながらクレッシェンドしつつ、一気にコーダへとなだれ込む圧倒的な力感は、

フルトヴェングラーをもってしても、一期一会の演奏と思えるほどに感動的なもの。

1954年に同じコンビでライブ録音された全曲盤でも耳にし得ない、素晴らしい演奏です!


そんな思い入れを払拭して、違ったアプローチの演奏を楽しみたいと思ってはいるのですが…。

この呪縛からは、容易には抜けられそうもありません。

ホームページへ