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A.ドヴォルザーク:
ピアノ三重奏曲第4番「ドゥムキー」 

スーク・トリオ(1978年録音)
ヤン・パネンカ(p)
ヨセフ・スーク(vn)  ヨセフ・フッフロ(vc)


ドヴォルザーク(1841-1904)50歳の1891年に作曲、自ら「ドゥムキー(ドゥムカの複数形)」という副題をつけました。

標準音楽事辞典(音楽の友社;1989年第1版第30刷発行)によると、

【ドゥムカ】
スラブ民謡の一種。物語的な性格を持ち、哀歌の部分と楽しい部分の急な交替を特徴とする。テンポが遅く短調の曲が多い。

このように記されています。


ピアノ五重奏曲第2番やピアノ四重奏曲第2番、交響曲第8番といった、チェコ国民学派を代表する名作を続々と誕生させていた円熟期に、何故スラブ民謡なのか…。

1888年にプラハを訪れたチャイコフスキーと親交を結んだことがきっかけとなって、翌々年にモスクワとサンクトペテルブルクを訪問したことが、彼の探究心に火をつけたと推測することは、

後のアメリカ在住期間中に、ネィティブ・アメリカンや黒人霊歌から受けた影響とその成果の大きさを考えれば、決して的外れではないと思います。

曲は基本的には緩→急→緩の形式で組み立てられていますが、第5楽章のみが、急→緩→急で構成されています。

ただ、スラブ的な哀愁を意識させる側面があるとは言え、

基本的にはボヘミアの雰囲気が色濃く漂った、ロマン派の作品であることには違いないでしょう。


第1楽章は、チェロが詠嘆調に奏でるメランコリーな旋律と、
一転して爽やかで軽快な舞曲の対比が、大変に印象的!

第2楽章は、雨だれを思わせるピアノ伴奏の上を流れる、物想いに耽るような弦の奏でる旋律と、
ひととき夢の中で遊ぶような愉しげな、しかし儚なく消え去るような舞曲との、絶妙な対比!

黄昏時、人恋しさにふと漏らすため息と、
走馬灯のように流れる想い出が悲しみをつのらせるような第3楽章…。

悲しみを背負って歩く姿と、
気を取り直して歩む姿とが対比されるような第4楽章。

第5楽章の力強さが感じられる急の部分に、ベートーヴェンの第9交響曲の2楽章をダブらせるのは私だけ…?

終楽章は、何かを希求するように激しく燃え上がる舞曲と、
過ぎ去りし日々への郷愁が漂う緩除部…。


スークトリオによる演奏は、聴くほどに味わいが深まってくる、この曲の定番と評される名演!

ドヴォルザークの書いた美しい旋律と、民族の燃えたぎる情熱が聴き取れる、超お薦めできるディスクです。

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