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B.バルトーク:ハンガリーの風景 

ピエール・ブーレーズ指揮  シカゴ交響楽団


バルトーク(1881-1945)は、コダーイとともにハンガリー全土のみならず東ヨーロッパの民族音楽を収集・分析する中で、それらを素材にして多くのピアノ曲を作曲しています。

しかし第1次世界大戦で敗戦国となったハンガリーは、国土が大幅に縮小され、

バルトーク自身も政治の混乱にも巻き込まれ、作曲家・民族音楽研究者としての名声は高まるものの、不自由な生活を送っていたと言われます。

彼は1931〜33年にかけて、出版社の求めに応ずる形で、ピアノ曲を管弦楽曲に編曲していますが、

これは困窮した生活費を補うためだとか…。


『ハンガリーの風景』は、1908〜1911年にかけて作曲したピアノ作品の中から、好評を博した5曲を選んで管弦楽化したもの。

作曲者自身が付けたタイトル通り、ハンガリーの農村風景を描いた、描写的な作品です。


第1曲:「トランシルヴァニアの夕べ」
クラリネットの奏でるのどかな雰囲気と、フルートの奏でる鄙びた舞曲が、穏やかな農村の夕べの雰囲気を醸します

第2曲:「熊踊り」
ダイナミックな中にもとぼけた味わいのある、朴訥とした男の踊り…

第3曲:「メロディー」
弦の奏する静謐さと、憂愁たなびくクラリネットの音色、死者を弔う鐘を思わせる不思議な響きや、ハープのアルペッジョやグリッサンド…、心に沁み入る音楽です!

第4曲:「ほろ酔い」
酔っ払いの百態を真似たような音楽。千鳥足を思わせるリズム、うつろな視線、呂律の回らない調子外れの声…。

第5曲「豚飼いの踊り」
ぎこちなく感じられるシンコペーションのリズムに始まり、ユーモラスな木管を伴ない、雄叫びをあげながら情熱的に盛り上がる…。


この曲、例えばブーレーズ/シカゴ饗盤のようにグローバル化された、民族色とはおおよそ縁遠く思われる演奏からは、美しさやダイナミックさの中に、普遍的な素朴な音楽の魅力が感じられます。

その一方で、フィッシャー/ブタペスト祝祭盤のような、マジャールの訛り(多分?)丸出しの演奏にも、土俗的な溌剌とした魅力と、曲を完全に掌握した本場物の面白さが感じられるのです。

私は、ブーレーズ盤でこの曲の魅力を知り、フィッシャー盤で土俗的な面白さに馴染めるようになりました。

どちらも捨てがたい演奏だと思いますが、今回は、強いて私にとっての入門盤となったブーレーズ盤の方をエントリーさせていただきます。

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