高校2年生の修学旅行でのことでした。
夜、旅館の布団に寝っ転がりながら、人生とは…、恋とは…、将来の夢について…など、高校生らしい話題で盛り上がっていた時、
部屋の片隅から、(私には)聴き慣れない音楽が洩れ聞こえてきました。
それに反応した何人かが、「おい、ラジオ講座聴いてんのか!」。
一人が、寸暇を惜しんで勉強を始めたらしく、そのことはさして気にもなりませんでしたが、
場の雰囲気から、殆どの同級生がこの番組を聴いているらしいことを悟り、
大学受験に完全に出遅れていると感じた私は、内心焦ったことを覚えています。
O社の大学受験ラジオ講座!このテーマ曲が、『大学祝典序曲』でした…。
1879年、ブラームスの作曲家としての功績を称え、プレスラウ大学から名誉博士号が贈られましたが、
大学当局の本音は、ドイツ楽壇の重鎮に、大学のために無料で作品を書いて欲しかったからだとか。
礼状だけで済まそうとしたブラームスでしたが、周囲に促されて翌年に作曲を開始。
自作主題に加え、当時の学生歌を4曲引用して序曲風に接続、
良く言えば青春を謳歌する、
悪く言えばキャンパス内を酔っぱらって放歌するような、
そんな楽しい音楽を書き上げました。
今日エントリーするのは、バルビローリ指揮するウィーン・フィルの演奏。
これを聴く直前に、バーンスタインが同じオケを振った演奏を聴いていたのですが、
とにかく音色が明るいことにびっくり、表情の豊かさにも二度びっくり!
ブラームスらしくないとの批判も当然あるのでしょうが、この曲想にはぴったりの演奏だと、私は思いました。
ティンパニのロールに導かれてトランペットが奏する、コラール風のアカデミック(?)な旋律、
ヴァイオリンと木管が奏でる美しい旋律、
ファゴットによってユーモラスに歌われる旋律は、お馴染みラジオ講座のテーマ曲、
最後には、フルオーケストラによって鳴り響く、青春を謳歌するような輝かしいフィナーレ!
屈託のない、伸びやかな素晴らしい演奏だと思います。