多数のフランス人兵士を虐殺したという歴史上の事実を素材に、オペラ化されたものです。
1292年の復活祭の翌日の夕刻、教会の前の広場でミサを待つ人々の中に酔っぱらったフランス兵が乱入し、女性に暴行を加えたことが発端となって、
積年の鬱積した不満が爆発し、翌日の夜明けまでに2000人余りのフランス人が殺戮されたといわれる事件です。
住民たちが暴徒と化した時、たまたま夕べの祈りを開始する鐘が鳴り響いたと言われ、
そのためにこの事件は、「シチリアの晩祷(鐘)」と名付けられています。
オペラでは、このシチリアの晩鐘が、クライマックスで打ち鳴らされることによって、
歴史に残る惨劇の引き金となった、という趣向になっています。
パレルモを治めるフランス人総督(植民地などで、政務・軍務を統括する官職)は、
互いに愛し合う、シチリア人女性との間に生まれた実の息子と、
処刑された前シチリア皇帝の妹とが結婚することによって、
シチリアの人々も、フランス人に対して友好的になるだろうと考え、
結婚式当日に、自ら祝福の鐘を撞きますが、
皮肉にもそれが、フランスに反感を抱くシチリアの人々への蜂起の合図となって、
多くのフランス兵士ともども、自らも命を失うという悲劇的な物語に仕立てられています。
昔LPで聴いた、トスカニーニ/NBC響の凄絶な演奏は素晴らしかったと思うのですが、いかんせん音が痩せていて…。
今日エントリーするのは、カラヤン指揮するベルリン・フィル(1975年)の、胸のすくような精彩感に溢れた演奏です…。
圧政に苦しむシチリアの人々の重苦しさと、どうにもならない諦めの感情が支配する、冒頭部の緊張感。
それに続いて、渾身の力を込めて叩きつけるような激しい憤り!
愛の言葉を歌い交わす弦の響きの、官能的なこと。
研ぎ澄まされた高弦の美しい響きが醸す、悲劇的な結末への予兆。
そして、ワクワク感が最高潮に達する、素晴らしいクレッシェンド!
イタリア人指揮者に拘らずに、是非ご一聴を!