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レーフ・ヴォーン・ウィリアムズ:
海の交響曲(交響曲第1番) 

シーラ・アームストロング(ソプラノ)  ジョン・キャロル・ケース(バリトン)
サー・エードリアン・ボールト指揮  ロンドン・フィルハーモニー管


『海の交響曲』は、アメリカの詩人ウォルト・ホイットマンの代表作『草の葉』から、海に関する詩を抜粋して、それに曲をつけたカンタータ風の作品。

全4楽章には順に、「全ての海、全ての船に寄せる歌」「夜の渚で、一人」「スケルツォ:波」「冒険者たち」の副題が付けられています。

『草の葉』は、人間の誇り・民主主義の理想・霊的な高み・性の自由化など、アメリカンスピリットの神髄を歌い上げたと評される、同国の文学を代表する自由詩集。

私は語学が苦手で、原語で詩を味わうことなどとてもできませんが、

音楽を聴いていると、イギリス人ヴォーン・ウイリアムズが詩から読み取った高貴な魂が、実直に伝わってくるように思えます。


第1楽章は、金管のファンファーレに続き、“Behold、the sea itself(見よ、海を)”と叫ばれた後、オーケストラがユニゾンで奏でる音楽は、
紺碧の空と壮大な海の情景や、
大海原に乗り出す人々の熱いロマンが表現された、
瑞々しい感動に溢れたもの!

第2楽章は、夜の渚に佇み、風の音や海鳴りの響きに耳を傾けながら、孤独な瞑想に耽る趣が…。

第3楽章は、大海原でうねる波の様子や、それを蹴立てて進む船を描いた、勇壮な音楽。

「冒険者たち」の副題が与えられた終楽章は、この交響曲の白眉!
祈るように、厳かに開始されます。
ここで言う冒険者とは、
高邁な精神的高みを目指す魂の衝動に立ちはだかる艱難辛苦を、
七つの海に向かって船出する人々のそれに譬えているのでしょうか。
曲の終盤では、
“Sail forth”での理想に燃えての力強い船出、
“O my brave Soul”と自らを諭すように静かに語りかけ、
そして水平線の彼方へと、消え入るように遠ざかって行きます…。

詩に歌われたアメリカンスピリットを、イギリス人ヴォーン・ウィリアムズが含蓄深く表現した、

素晴らしく感動的な音楽だと感じています…。


ボールト/ロンドン・フィルの演奏(1968年録音))は、

この壮大な音楽を、泰然自若とした息の長いフレージングで歌い上げた、大変に格調の高いものもの。

イギリス音楽の素晴らしさが実感できる、滋味深い演奏だと思います。

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